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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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ケッチャク-14


「そんなトコも可愛いっちゃ可愛いから許す」

 テオの言葉を聞いたパルの硬い鱗が、ふやかした様に柔らかくなり耳の穴からプシュッと蒸気が吹き出す。
 多分、人間形態なら『湯気が出る程、真っ赤になった』といった感じだ。

「くくっ、さあ片付けようぜ?お前は奴を引き付けろ。オレが守る」

 グリグリっと頭を撫でられたパルは、気持ち良さそうに目を細めた後、大きく空気を肺に入れた。

『ゥオオオォオン』

 魔物らしく咆哮して吸血蔦の注意を自分に向ける。
 吸血蔦は街の石畳を抉りながら、砂丘へ向かうパルを追いかけた。

「だ……大丈夫……なの……か?」

 巨大な黒蜥蜴に股がり、ペットの様に扱うテオを見て冒険者達は恐る恐る身体の緊張を解く。

「み、みたいだな……」

 吸血蔦は只の水分より、養分も量もたっぷりな黒蜥蜴の体液を選んだようだ。
 これで、吸血蔦が避難場所を襲う可能性が低くなった。
 だが、黒蜥蜴を追いつつも触れるものから水分を吸い取るのは止めていない。

 まだ、油断は出来ない。

「アンタらは避難場所頼むなっ!」

「お、おう!」

「分った」

 テオの怒鳴り声に殆どの冒険者が避難場所である領主の舘に向かったが、数人はテオとパルの方へ走った。
 それはテオがバイトをしていた時、一緒に働いていたメンバーと宿屋の常連だった。

「お前が動物に好かれ易いのは知ってたが、まさか魔物まで手なづけるたぁな」

 バイト仲間のファイターが呆れた口調で言うのが聞こえて、テオは目を瞬いて振り向いた。

「お前が大丈夫っつうんなら大丈夫だろ?良く分からんが吸血蔦はこの魔物に執着してるみてぇだし、囮になるなら援護してやる」

「ていうか、ヒヨッコ坊主に頼れるかってんだ」

 筋肉ムキムキの宿屋の常連は、ファイターと一緒に走りながら憮然とした顔で言い放つ。

「引退したとはいえお前よりまともに動けらぁ」

 そう言った常連はその言葉を証明するかのように、伸びてきた蔦をショートソードで弾いて吸血蔦を牽制した。

「ん。頼んだっ!」

『クオッ』

 テオの言葉と合わせて鳴いた魔物パルの声が「よろしく」と言っているように聞こえ、常連は一瞬驚いた顔をしてからニヤリと笑う。



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