ケッチャク-15
「つうか、羽の生えたお嬢ちゃんは?」
ギクッ
「巻き込まれたか?!」
心配しないで♪ここに居るから♪……など、言える筈も無くテオとパルはダラダラと冷や汗をかく。
「ここだよぉ〜」
あり得ない声が砂漠に響き、2人は声の方を向いた。
そこには、ピィに股がったリュディとパル、それにノアの姿。
「大丈夫ぅ〜羽がちょっと傷ついちゃっただけ。もう飛べないから後よろしくぅ」
「おお、そっかあ!休んでな」
「ありがとう〜」
そう言って手を振ったパルは、あんぐりと口を開けている2人にパチンとウインクして見せた。
(あ、ランスか)
ピィに股がったパルの後ろでノアが小さく口を動かしているのが見え、テオは納得する。
医療魔術以外ド下手くそなノアは、変化の魔法という初級魔法でも下手くそだ。
他人を変化させるのも普通なら魔法をかけて終わりだが、ノアの場合は傍に居て呪文を唱え続ける必要がある。
パルが魔物に変身したのを見て、ランスに変化の魔法をかけたらしいが……可愛らしいパルの仕草をランスがしていると思うと無償に腹が立つ。
『グァ』
テオの気持ちが分ったのか、本物のパルが唸って身体を揺らす。
アタシ、あんなんじゃないもん……と、言いたいらしい。
「助かったっつう事で我慢すっかぁ」
パルをカリカリ掻いて宥めながら、テオは息を吐く。
そのちょっとの油断が命取りになった。
ボコッ
「『?!』」
いきなりパルの足元が球状にボコリと陥没し、巨大なパルの身体が一瞬宙に浮く。
しかし、直ぐに落下して砂煙を上げて底に墜落した。
「くっそ」
どうやら蔦を使ってせっせと砂を掘っていたらしい。
そこにパルの重みが加われば一気に陥没という寸法だ。
「この蔦男……思った以上に頭良いな」
更に執念深い。
「だあら女に嫌われんだよっ」
薄目を開けて言い放ったテオは、砂煙を掻き分けて伸びてきた蔦をサバイバルソードで斬りつける。
樹液を撒き散らしながら消えた蔦の反対側から、また別の蔦が伸びて魔物パルの左後ろ足に絡みついた。
『グオオッ』
ビクンと身体を跳ねさせた魔物パルの後ろ足から、焦げ臭い煙が上がる。