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少女剣客琴音
【歴史物 官能小説】

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説得-1

琴音は松蔵を前にどう切り出そうか悩んでいた。
一時松蔵は御前試合に出て勝ち残り指南役になって琴音の婿になりたいということを打ち明けた。
だが御前試合に出て指南役になることも、琴音の婿になることも諦めるように言ったのだ。
そして今試合には出ないまま指南役に推挙するという話を受けるだろうかと考えている。
恐らく指南役というのは婿となることと絡めて考えていたのだろう。
無精ひげで現れた松蔵は琴音の話を聞いて言った。
「琴音殿、拙者は藩勤めは向かないかもしれぬ。家も元は下級武士の家であるし、剣術指南役としては家柄に格がない。
もともと師匠の無角先生と同じく浪々の身が板についているのだ」
よほど引き受けてくれなければわが家は取り潰されるのだと言おうとしたが、卑屈に助けを求めるようでできない。
まして婿になっても良いから指南役をとも、自分を安っぽく売るようで言えない。
「ところで、兄弟子。何か願をかけていたような気がしますが、それはどうなったのですか?」
言うことがなくて口から出たのはそのことだった。
「そう言えば黒田玄武を負かしたそうで、おめでとうございます。これで私の役目も終わったことですし、そうですね。念願が叶ったのでこの髭面ともお別れですな」
そう言いながら離れに戻って行った。
すると監物が琴音を呼んだ。
「どうだ、琴音。桑野殿は承知してくれたか? 剣術指南役の件じゃよ。」
「いえまだ。桑野殿は浪々の身でいるのが気が楽だと」
「たわけ者。婿に入って貰うように言えば指南役も引き受けるではないか」
「でもそんな取引みたいなことを」
「なんだと。お前はこの多田家が断絶されても構わないというのか。お前が桑野殿を婿に迎えれば済む話を何を体裁に拘っているのじゃ。
お前も随分桑野殿を気に入っている様子だったではないか」
「そ……そんなこと。それはあくまで同門の兄弟子として」
「ええい、不正直なやつめ。今夜お前は離れに夜這いに行け。そして桑野殿を篭絡するのじゃ。
さすればわしが桑野殿にどう責任を取るのだと詰め寄って、婿に入ることと指南役を引き受けることを承諾させる」
「ですが父上、何処の世界に殿方の寝所に夜這いをかける女人がおるというのです」
「指南役になりかけた剛の者を剣で下す女もいるから、なんの不思議もない。
男を篭絡する術が分からなければこの父が手を取り足を取り伝授しても構わない」
「なっ……何を恥知らずなことを仰ってるのですか」
「恥知らずはお前じゃ。一家が断絶するやもしれぬというのに、まだ男の好みを言っておる。こうなれば桑野殿を落すかわしと縁を切るかどちらかを選ぶのじゃ」
 


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