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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第4章 会合-8



 ラッキ〜!
 探し歩くつもりで食堂に入ったら、目的の人物はすぐ見つかった。なんと、いつもは生徒会執行部がいるはずのVIP席に、前会長の綾小路紫織だけじゃなく、現会長の九条直哉までいるじゃない。おまけに他の執行部のメンバーは見当たらず、テーブルには二人きり。何なの、このあつらえたようなシチュエーションは?
 まぁ、いいわ、渡りに船とはこのことよ。こうなったら、二人まとめて相手してあげようじゃない。早速あたし達は、窓際のテーブルめがけて突撃した。
 「すいませ〜ん」
 こういうのは勢いが大事。遠慮は無用とばかりに、何やら話し込んでいた二人に声をかける。
 ‥と、ここでようやくあたしは気付いた。え〜と、何かな、この異様な緊張感は?
 身を乗り出すように話しこんでいた九条会長は、ぎょっとしたようにこちらを向き、その顔にはびっくりしたような表情が浮かんでいる。対する綾小路前会長も、すぐさま居住まいを正すが、何やら慌てたような気配をまとっている。
 な〜んか、密会を覗き見されたって感じね。やっぱりこの二人、裏で結託してんじゃないかな。
 「‥あら、報道部の方達ね。九条会長にご用かしら?」
 まるで何事もなかったかのように応じたのは、綾小路前会長の方だった。優しげな微笑みを浮かべ、その態度は平静そのもの。でも、二人の間に何かがあったのは間違いない。あたしは彼女の目からそれを読み取ろうと、注意を凝らした。
 目は心の窓と言うように、感情は目に現れるもの。それを読みとるのが人の心を読む極意なんだけど、心理戦のベテランになると、それすら読み取らせない術を心得ているのよね。
 去年から何度かインタビューを繰り返してきたけど、残念ながら彼女の心を読み取れたことは一度もない。こう言う相手には、動揺を誘う質問をしたり、図星を突く事で心の隙を作らせ、感情を表に現させるんだけど、その点彼女は完璧だった。さすがは政財界の重鎮、綾小路家のご令嬢と言うべきか。今だって穏やかな光を称えた瞳からは、何の感情も読み取ることができない。
 は〜‥それにしても、ほんっと綺麗な人。
 まじまじと顔を見てたら、改めて再認識しちゃう。艶のある長い黒髪に、清楚感漂う白皙の美貌。日の光を背に受けて佇む姿は、まるで天女様のよう。女のあたしが見ても溜め息が出ちゃうわ。報道部だって美人揃いで有名だけど、あたし達とは格が違う。なんて言うか、庶民とは一線を画す気品があるのよね。
 でも、今はそんなこと言ってらんない。彼女が天女様に見えようが女神様に見えようが、腹の中には売春組織の黒幕と言う悪魔が潜んでるかもしれないのだ。ほら、しっかりなさい。さっき相手は同じ高校生って喝入れたばっかりでしょ!
 さぁ、用意しておいた返事を綾小路紫織前かいちょ‥、もうっ、言いにくいわね、この名前。そうよ、こんな仰々しい名前をいちいち呼んでるからいけないんだわ。
 ん〜、決めた。しおりんに決定。あたしの中ではこれから、彼女のことはそう呼ぼう。さぁて、行くわよ〜。


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