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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第4章 会合-6

 「問われるべきは政治家の資質です。山積する日本の諸問題を解決するに当たっては、旧態依然の政治から脱却し、真に日本の将来を嘆く憂国の士を集め、政治に革命を起こさねばなりません。その為に求められるのは、彼等を力強く率いるリーダーであり‥」
 「そのリーダーには、自分こそふさわしいと?」
 次第に熱を帯びる演説を、私は半ば呆れ、半ばがっかりしながら遮った。まったく、とんだ劇場型政治家ね。理想を掲げるのは結構だけど、その理論での行きつく先が、独裁政権だとわかってないのかしら。
 「いえ、私などまだまだ若輩の身。ですが大望の為には己を捨て、民衆の為に奉仕する精神こそが肝要。それはこの鳳学院の統治においても同じことだと、伊集院さんと話し合ったのです」
 統治?彼は今学院の運営のことを統治と呼んだわ。どうやら好青年の仮面の裏に、かなり傲慢な本性をが潜んでいるようね。
 自称未来の総理大臣は、はす向かいの席に腰を下ろすと、自信に満ちた笑みを向けてくる。だが、今やそれも演技にしか映らない。内心込み上げてくるうんざりした気分を、表に出さないためには努力が必要だった。
 薫がこの陳腐な精神論に感化されたとは、到底考えられない。だが、彼の言葉から嘘をついている様子は窺えなかった。もっともその方が問題で、黙って放っておけば、その内ファシズムを唄い出すに違いない。
 「その考えに、伊集院家の賛同は得られたのかしら?」
 「残念ながら、途中で気分が優れぬようだったので医務室へお連れしました。その後の具合はいかがでしょう?今泉先生からは、完治して退院したとお聞きしましたが」
 白々しい返答を聞きながらも、私は判断に窮した。はたして彼はこの件に、どの程度関与しているのだろう。
 この無知蒙昧な理想家は、政治家としては小者だ。到底大成する器とは思えない。黒幕が誰にせよ、彼のような人材を仲間に引き入れるとも考え難い。それより都合の良い情報だけ与えて、使い捨ての駒にしたほうが無難でしょう。そうなると、彼から陰謀の全容を窺い知るのは難しいかしら。
 「私は必ずや、日本を優れた国家へと導いていきます。その理想を実現するためにも、どうか貴方のご助力を頂きたい」
 私の心の内を知るすべもなく、彼は己に酔ってか、九条劇場の上演を続け、野心を秘めた熱い眼差しを向けてくる。
 どうやら場の空気を読む能力が欠如しているようね、それは政治家にとって致命的なことよ。冷静な表情を保ちつつも、彼の評価に新たな一項目を加える。それにしても、政治家を目指す者にとって、綾小路家の不興を買うことがどれほど危険なことかわかってないらしい。勝手な理屈を述べた挙句、気安く綾小路家に助力を求めてくるなど、身勝手も甚だしい。
 「代々綾小路家は、政治の世界と深く関ってきました」
 彼の昂ぶった気持ちを抑えるべく、わざと感情を感じさせない語調で、熱弁を遮る。


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