ソレゾレノケツイ-4
「あ……あの……聞き間違い……ですよね?」
妃だとか聞こえたが、よりによって植物を体内で飼って居るような、両性具有の人間を?
冗談にしても質の悪い、笑えない冗談だ。
「リュディヴィーヌ嬢、私は嘘をつかないのを信条としているんですよ。立場上隠し事は多いですが、私の口から出る言葉は常に真実です」
ランスはニコニコしていたが目は真剣だった。
「気の……迷いです……」
リュディは落ち着きなく視線をさ迷わせ、最終的に膝に置いた自分の手を見つめる。
「私の身体には……」
「ええ♪私にとっては他に2つとない魅力的な身体ですよ」
「……両性具有ですし……」
「理想です♪」
ランスはキラキラした顔でリュディの言葉を防いでいく。
「私にとって植物と共存している貴女は魅力的ですし、両性具有の身体も神秘的に映ります♪」
ランスの言葉はリュディの胸に突き刺さった。
それは、恋の矢が刺さる様な甘いものでは無く、焼けた鉄の杭を突き立てた様な衝撃。
「私は……」
(そんなに……綺麗じゃないっ……!)
自分が助かる為とはいえ何人殺したか……しかも、自分の手ではなく植物を使ってだ。
更にその植物までも枯らそうとしている。
そんな人間が綺麗な筈が無い……そう伝えようとした矢先。
ダッダッダッ
バァーン
「ちょっと、ごめ〜ん」
物凄く騒がしくパルが入ってきて、疾風の如く窓の外へと消えていった。
「「…………」」
唖然とパルを見送ったリュディとランスは、再び聞こえる足元に気づきドアへ目を移す。
ドタドタドタドタ
ドーン
「わりっ」
今度はテオがドアから現れたが、こっちは過ぎ去らずにドアノブを握ったままゼエゼエと息を切らせていた。
「はぁっはぁっパル……来た……?!」
テオの質問に2人は同時に窓へと指を向ける。
「さんきゅっ」
パルと同じ様に窓から出ようとするテオを、リュディは慌てて引き止めた。
「まっ……待って、テオ」
「んあ?」
テオは片足を窓枠に乗せた姿勢で振り向く。
「出来たの」
「何が?」
「除草剤」
「おおっ!」
そういえばその為にクラスタに滞在していたんだ、とテオはパチンと指を鳴らした。