ソレゾレノケツイ-5
「そっか。お疲れさん。じゃあ、直ぐ出発か?」
テオは窓枠に乗せていた足を降ろし、ランスが持っている瓶を眺める。
「うん……準備が出来次第……行ける?」
リュディの視線がテオの左腕に注がれ、視線に気づいたテオは「ああ」とその腕を動かして見せた。
「大丈夫だ。完璧とは言えねぇが問題なく動く!」
肩までびっしり生えていた鱗は所々剥げ落ち、今は肘から先にまばらに生えている感じ。
体内の血量も回復して、パルの魔力は微かに残るだけでほぼ消えてしまった。
「予定通りピィで行くか?」
最近、空まで飛べるようになったピィは移動に最適。
「ん……ちょっと……手伝ってくれる?」
「ああ」
立ち上がってそそくさと立ち去るリュディに素直について行くテオ。
その2人を見送ったランスは、肩をすくめて苦笑した。
「ふむ。逃げられてしまったなあ」
屈伸するように立ち上がったランスは窓の方まで歩いてそこから顔を出す。
「パルティオ嬢も逃げてるのかい?」
上を向いたランスは、壁に向かって声をかけた。
「あう」
何も無いように見えた壁に、浮き出るようにパルが現れる。
保護色になって壁に張り付いて隠れていたが見つかってしまった。
人間型でべた〜っと壁に張り付いている様は何とも情けない。
「何でテオドアから逃げているんだい?」
ランスは手を伸ばしてパルの手を取り、部屋の中へ引き入れる。
誘われるがまま身軽に部屋に入ったパルは、ちょっと拗ねた顔でランスを見上げた。
「だって……テオが好きって……」
「何を?」
「……アタシ……」
「………………」
パルの言葉にランスは頭の中を整理する。
「テオドアがパルティオ嬢を好きって言ったのかい?」
「特別だって。死ぬ時、最期に会いたいのはアタシなんだって」
パルは顔を赤くしてもじもじと告白する。
「パルティオ嬢はどうなんだい?」
「わ、分かんないから逃げてるのっ!そりゃ嬉しいけど、アタシ魔物だし、テオの勘違いかもしれないしっ」
パルは握った両手をブンブン振ってランスに詰め寄った。
「お、落ち着いて落ち着いてパルティオ嬢」
「うう〜」
パルは眉をハの字にして涙目になっている。
本当にどうしたら良いのか分からないのだ。