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歪愛
【兄妹相姦 官能小説】

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均衡の崩壊-1

「ただいまー」
いつも通りきっちりと靴を揃えて玄関に上がると、
「おかえり」という静かな声と共に二階から降りてくる影があった。
「あ、隼太。帰ってきてたんだね」
どうやら友人宅に泊まりに行っていた次男が帰宅していたようだ。
特に感情を表すこともなくこちらを見る二人目の兄に、杏樹は微笑みかけた。
谷川家の次男、隼太は兄の隆一が一見して温和な顔立ちで人当たりが良いのとは対照的に近寄りがたい雰囲気を纏っており、ともすれば冷徹に見られることもある。
(兄妹三人そろって、本当に似てないんだよね)
彼の切れ長の瞳をを見つめながら杏樹は兄妹三人の顔付きを頭の中で並べてつくづくと思う。
「腹減ったから飯作って」
「はいはい、ちょと待っててね」
隼汰の声はどこまでも不遜でなにか頼みごとをしているようには到底聞こえない。
ここで隆一ならなら『一緒に作ろ』と言ってくるところだが、杏樹は次兄のこういうわがままな手のかかるとことを密かにかわいいと思っているので、文句を言うこともなくキッチンに向かった。
「隆兄さんは?」
キッチンの隣にあるリビングのソファーに寝転がった隼太はテレビから目をそらすこともなく「まだ帰ってきてない」とめんどくさそうに答えた。
(ほんと、兄さんっていうか弟みたい…)
杏樹は昨日断念した揚げ物をするめにてきぱきと鍋に油を注ぎながら小さく笑みを漏らす。長兄のことを『隆兄さん』と呼ぶのに対して次兄を呼び捨てで呼ぶのもそういう彼女の心理の表れなのかもしれない。
(小さいときは、「俺のことも『兄さん』って呼べ」ってしつこく言われたっけ)
その時の隼太の必死な様子を思い出して、今度は堪えきれずくすくすと声に出して笑う杏樹を、隼太はソファーの上から怪訝なものを見る眼つきで眺めたが、彼女が何かを思い出して一喜一憂するのはいつものことなのでそのまま放置することにして目の前のバラエティ番組に視線を戻した。
「ただいま」
耳に心地よいテノールの声が玄関から聞こえた。
(隆兄さんも帰ってきたみたい)
兄に帰宅のあいさつをするべく、振り返って玄関の方に声をかけようとした瞬間に、
「あつっ!」
彼女は条件反射でぴちぴちと軽快な音を立てる鍋からぱっと腕を遠ざけた。どうやらよそ見をした瞬間に盛大に油が飛んできたようだ。彼女が自分の腕の一部が次第に赤くなっていくのをただただ観察していると、先ほどの気怠そうな様子から一変して素早い動きで横に来た隼太に強引に腕を取られる。
「ぼけっとしてないで早く冷やせよ」
彼は苛立った様子でシンクに杏樹の腕を引っ張っていき、水道の蛇口をひねって火傷した部分に水をかける。
「隼太…ありがと」
彼は深く嘆息してから眉間にしわを寄せて杏樹を睨む。彼女はその兄の様子を確認して肩を強張らせて身を縮めた。
(隼太がこういう顔をしてるときって次に来るのは絶対説教なんだよね…)
「杏樹はいつもいつも注意力が散漫すぎる。そのせいで痛い目見たのも一度や二度じゃないだろ。なんでしっかりしてるくせにこういうとこは抜けてるんだよ」
予想通りの説教に杏樹は小柄な体はさらに小さくなる。隼太に口で勝てるわけがないのは経験上明らかで、自分がどんくさいことも確かなので対抗することができない。
「隼太。杏樹が抜けてるのはもうどうしようもないんだからそんなに怒らないの。杏樹、大丈夫?」
と、慰めているのか馬鹿にしているのかよくわからないことをいいながら長兄がキッチンに入ってきた。心配そうに彼女の顔をのぞき込んでくる。
「隆兄さんー…」
助けがやってきたというように涙目で彼を見上げ、その腕に縋り付く。
隆一はその助けに応えててやるかのように彼女の頭に手を持っていき頭をぽんぽんと優しくたたいた。
「よしよし。でもね、のんびりしていると天ぷらが丸焦げになるよ?」
その隆一の言葉に杏樹は慌てて鍋に向き直り、隼太は深々とため息をついた。
結局、長兄と杏樹で一から料理しなおすことになったのは言うまでもない。

食事が終わった後に今日一日の報告をするのは3人で生活するようになってからの彼女達の習慣になっていた。といってもほとんどは杏樹の話で兄2人はいつも聞き役に回ることになるのだが。
「でね、うさぎをだっこできる場所とかもあったの。ほんとうにかわいくって…」
杏樹は今日大輔と行った公園の話を仲のいい友人と行った、という体で兄2人に語った。彼女が幸せそうに目を細めて話すのを、長兄は相槌を打ちながら笑顔で、次兄は頷くこともなく終始無表情だが熱心に耳を傾ける。ただ時折杏樹が「友達がね…」と口にするたびに隼太の視線が鋭くなるのには、喋るのに夢中な杏樹も、妹の言葉を一言も聞きのがすまいとする隆一も気づいていなかった。
彼女の話が一区切りついたところで珍しく隼太が口を開いた。
「そういえば杏樹、明日バイトの日じゃないか?」
杏樹は、父が置いていく大金にはできる限り頼りたくないと思っていて、自分の小遣いを家庭教師のバイトをすることで稼いでいた。もしかしたら彼女なりの意地なのかもしれない。次兄の言葉を聞いた彼女ははあっと声を上げてソファーから立ち上がり、
「忘れてた!予習しなくっちゃ」
と慌ただしくリビングを飛び出してパタパタと軽快な音を立てて階段を駆け上がっていった。真面目な彼女の後姿を小さな笑みで見送った後、隼太は兄に向き直って真剣な面持ちで切り出した。
「隆一、杏樹のことで話がある」


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