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歪愛
【兄妹相姦 官能小説】

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均衡の崩壊-2

机に向き直って中学生用の数学書をぺらぺらと捲っていた杏樹は、ふと時間を確認した。どうやらいつのまにか1時間程度ずっと参考書とにらめっこしていたらしい。彼女はすこし休憩を取ろうと手を止めた。
(そうだ、大輔くんにお礼のメールしとこう)
携帯を探そうとして立ち上がった杏樹は、帰宅したときにバッグを玄関に置き去りにしたままであることを思い出した。部屋を出て螺旋階段を降りていると、リビングの扉の方から兄2人の微かな話声が届く。
(兄さんたちがこんなに長く話してるの珍しい)
普段は杏樹が部屋に入ると兄2人もそれぞれ自室に向かう。しかし今日はなにやら真剣な声音で話し込んでいる様子だ。
(…邪魔しない方がいいんだろうな)
今までにも兄2人が杏樹がいないところで彼女には理解できない難しい話をしていることはまれにあったので、鞄を静かにとり、降りてきたときよりも慎重な足取りで音をたてないように自分の部屋に戻った。

大輔と肩を並べてにこやかに談笑しながら歩く帰り道。夕日が二人の制服のシャツを橙に染め上げる。いつもと何も変わらないかと思われたが、しかい今日は違う終わりが待ち受けていた。
家の前で大輔が手を振り、踵を返そうとしたところで玄関の扉が内側から開かれた。杏樹が驚いて振り返るとそこには
「嘘、隆兄さん!まだ会社にいる時間なんじゃ…」
彼女の言葉に大輔は方向を変えようとしていた足を止める。
「おかえり、杏樹。今日は早退していいって言われたから早く帰ってきたんだ」
隆一はどこまでも害のない笑顔でなんでもないことのように告げた。
「そんなことより…」
杏樹に向けていた大輔に視線を移す。
「初めまして。杏樹のおともだち…かな?」
杏樹はその兄の言葉でさーっと自分の顔から血の気が引いていくのを感じた。
長年、隆一のそばにいる杏樹には今の兄が浮かべている笑顔が作り物であることが分かってしまった。
(兄さん、怒ってる…こんなことならもっと早くに紹介しておけば良かった…)
こんな中途半端にばれてしまうくらいなら…
「初めまして。杏樹さんにはいつもお世話になってます」
大輔はそんな杏樹の内心を知ることもなく、持ち前の爽やかな笑みで隆一に対面した。
「いいえ、こちらこそ。突然だけど、今時間あるかな?少し話したいことがあるんだけど」
相変わらず微笑を浮かべたまま続ける隆一に杏樹の顔色はさらに悪化した。
「ちょっ…隆兄さん?いきなりなにを…」
彼女は焦って兄の服の裾をつかんで引き留めようとするが、彼は杏樹なんて目に入っていないとでもいうようににこにこと大輔の答えを待っている。
「全然大丈夫ですよ!俺もお兄さんから杏樹の話とか聞きたいですし」
隆一の笑みを歓迎の印だと勘違いした大輔は、二つ返事で承諾した。
「なら私も…」
「杏樹は先に家の中に入ってなさい、ね?」
その場に残ろうとした杏樹はしかし有無を言わせぬ兄の満面の笑みに体中を小刻みに震わせながらも反抗することはできなかった。
「杏樹大丈夫?顔色悪いよ?ゆっくり休んで」
玄関の扉の取っ手を取ると背中から大輔の心配そうな声がかかった。
「…ううん、大丈夫。また明日ね」
その優しい声音にに更に震えを大きくしながらもなんとか答えて、少しだけ振り返り、かろうじて笑顔で別れを告げて静かに家の中に入った。自分の兄と大輔がどうか普通の世間話をしてくれることを祈りながら。

パタン、と玄関扉が閉まり杏樹の姿が隠れた瞬間に、すっと隆一の顔から笑顔が消え、一切の感情が読み取れなくなる。優しげだった瞳はすっと細くなり、大輔のことを射殺そうとするかのような鋭い光を帯びた。そのあまりにも急激な変化に大輔は驚いた。彼の表情の変化に伴って自分を取り巻く空気の温度が2、3℃下がった気さえする。
「大輔くん…と言ったかな?」
「…はい、そうです」
口調は柔らかいものだが、その穏やかな声も無表情な顔から発せられると余計に気味が悪い感じがする。大輔はここにきてやっと、目の前の人物に自分が疎まれていることを悟った。
「単刀直入に言う。杏樹の前から消えてほしい」
彼から向けられるあからさまな憎悪に、他人から拒絶されることの少ない大輔は身がすくんだが、それでもここで引き下がるわけにはいかない。
「なぜですか?」
言い返す声は自然と自分が思ったよりも強い口調になっていた。
「僕たちに母がいないことは知っているね?…今となっては両親ともいない状況に等しいんだけど。まぁそれはさておき。杏樹は親がいない中で育ったせいもあって、常識がぬけているところがあってね」
「えぇ、そうですね」
大輔も杏樹が世間知らずなのは否定しない。一緒に出掛けて価値観の違いに困惑することも少なくないからだ。
「でもそういうところも含めて俺は彼女のことが好きで付き合ってるんです」
暗に、友達ではなく恋人だと主張する言葉に隆一の整った顔に苛立ちの色が表れた。
「別に君が杏樹を好きかどうかはどうだっていいんだけど。俺が言いたいのは、世間を知らない杏樹に変な常識を植え付けられたら困るってことだよ。」
「彼女に変な常識を植え付ける気なんて更々ありません。むしろ彼女はもっと世間に溶け込んで一般的な常識を学ぶべきではないですか?」
大輔の一歩踏み込んだ助言は隆一の機嫌をさらに悪化させただけだった。
「杏樹と出会ってまだ日の浅い君に、杏樹の生活に口を出す権利はないよ。
両親のいない僕たちは3人で支えあって生きていくしかないんだ。そこに君の入る余地はない。それぐらい、わかるだろう」
「それがお兄さんの本音ですね?」


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