アイノカタチ-16
「終わった……か……?」
ゼェゼェと息を切らしたテオは、そのまま仰向けに倒れた。
「テオっ?!」
パルは慌てて尻尾を動かしてテオを受け止めた。
「……んだよ……魔物でも喋れるんじゃねぇか……」
テオの魔物父は魔物形態だと喋れなかったので、喋れないのが普通だと思っていた。
「ぅ……だって……」
パルは落ち着き無く視線をさ迷わせる。
パルか?と聞かれた時どうしようか迷ったのだが、答えずにいたらバレないかな?と思ったのだ。
バレた時のテオの反応が、怖かったのだ。
「顔、見せろよ」
パルの気持ちなど知らずに、テオは命令口調で話す。
「…………」
パルはテオを無視して、そっぽを向いたまま動かない。
「顔……見せて」
今度はお願いされてしまい、パルは尻尾に乗せたテオにゆっくりと顔を向けた。
「!!」
視線を外していたのでパルもはっきりとテオを見ていなかったが、テオの状態は酷いものだった。
左腕は肘から先が千切れそうになっており、未だに血が流れている。
右腕もスライムに突っ込み過ぎてあちこち火傷だらけ。
顔色もかなり悪い……失血死寸前だ。
「テオ?!」
あまりの惨状にパルは大きな目を見開く。
「ああ……やっぱり……パルの目だ……」
薄く笑ったテオは右手を上げてパルの鼻先を撫でた。
「……綺麗だ……」
ひと言呟いたテオの手がするりと落ちる。
「テオ?!テオ!!」
尻尾を軽く揺すってみたが、目を閉じたテオに反応が無い。
(嘘嘘嘘嘘やだやだやだやだよっ!!)
変な虚栄心など持たずにさっさと変身して、一緒に来れば良かった。
(だって……テオは変わらなかった……変わらないもんっ)
パルの大きな目からボタッと滴が零れてテオを濡らす。
「死んじゃダメっ……死ぬのは許さないんだからねっ」
何も答えないテオの傷口に、パルはそっと口を寄せた。
赤い陽炎がパルを包み、ゆらゆらと揺らめきながらテオに流れていく。
(あったけぇ)
完全に意識が無かったテオだったが、身体を包む暖かいオーラだけはハッキリと感じとれていた。