アイノカタチ-15
「グオァッ」
パルであろう魔物が唸り声を上げて身体を低くした。
動くな、と言いたいらしい。
「うっせ。女に庇われてジッとしてられっかってんだ」
とは言ったものの腕は痛いし脂汗は流れるし。
しかし、パルの武器は炎と爪と牙と尻尾。
スライム系の魔物に炎をかけてもちょっと縮むだけだし、巨大な爪や牙は柔らかい身体でボヨンと跳ね返し、尻尾を叩きつけてもぬるりと滑ってしまい決定的なダメージが与えられ無いのた。
ここはテオのサバイバルソードで、的確に『核』をひとつひとつ叩くのが有効だ。
「一気に片つけるぞ。援護しろ」
サバイバルソードを地面に刺したテオは、パルの腹をポンっと叩く。
暫く動かなかったパルだったが、渋々といった感じで身体を少し上げた。
「誘き寄せるから核を独立させてくれ」
パルの腹の下から出たテオは、左腕に巻いてあった布きれを取る。
止まっていた血が再び流れ、濃厚な臭いが辺りに流れた。
パルに気を取られていた泥スライムが、ぶよんと波打ってテオに向かう。
『核』が明滅している様は、まるで喜んでいるように見えた。
「食いたきゃちゃんと並べっ!」
テオは波打つ泥スライムの動きを良く見て、数歩左に動いた。
テオを追うように伸びた部分に『核』がひとつ。
「パル!」
テオの合図でパルの爪が閃き、伸びた部分を切り離した。
ばちゅん
「おっしゃ」
すかさず尻尾を翻して本体部分を吹き飛ばしたパルに、テオは親指を立ててからサバイバルソードを口にくわえた。
単体になった泥スライムに右手を突っ込み、『核』を掴んで引き出す。
むちむちという何とも言えない感触に顔をしかめながら、掴み出した『核』を地面に叩きつけ、サバイバルソードで串刺し。
パキン
澄んだ音と共に砕けた『核』はゆっくりと光を消した。
「次っ」
意外とこの連携プレイは上手くいった。
テオが余り動かなくても良いように、パルが泥スライム本体を引き付け、1体ずつテオに行くように仕向けた。
基本的に食べるしか能の無い泥スライムは、最後の1体が殺られるまで同じ手に引っかかってくれた。
コレがもうちょっと頭の良い魔物だったら、こう上手くは行かなかっただろう。