クラスタ-9
抜けていた腰もいつの間にか治っており、震えていた身体も止まっていた。
気がつくとノアが作っていた籠も出来上がっており、テオが乗るのを待っている状態だった。
テオが籠に乗ると、デレクシスの肩にいた鷲が再び巨大化する。
その鷲はぶわりと羽ばたいて両足で籠を掴んだ。
「うわっ」
「きゃあっ」
そのまま空中に持ち上げられ、驚いたテオとリュディが悲鳴をあげる。
羽馬達は慣れているのか騒ぎもしない。
ジタバタしているのは自分達だけだと気づいたテオとリュディは、顔を見合わせて気まずい思いをするのだった。
1時間程空を飛ぶと、眼下に巨大な要塞が見えた。
海に突き出した半島の付け根部分を塞ぐ様に建てられた要塞は、飾り気も何も無く荘厳な雰囲気だった。
「すっげぇ」
テオは籠の隙間から下を覗き込んで感嘆の声をあげる。
唯一の装飾といったら要塞の屋上に並んだ大小様々な大きさの灯籠。
夕暮れの群青色の空に、オレンジ色の炎が揺らめいて凄く幻想的な光景だ。
「降りるよ」
デレクシスがひと声かけると鷲が旋回しながらゆっくりと高度を落としていく。
段々と近づく要塞は思った以上に大きく、灯籠だと思っていたのが篝火を持った人間だと分かる。
人間……というか、中には人間じゃないのも居た。
背が低くずんぐりした体型の2足歩行の狸やら、頭に角の生えた2メートルはある巨人とか……多分、魔物か獣人なのだろう。
その中のひとつが大きく揺れて鷲を誘導した。
篝火を持っているのは背の高い人間の男。
黒い髪を無造作に後ろに流し、黒いコートを着て、目まで黒。
何もかもが黒づくめの40過ぎの男は、不機嫌そうな顔で一行を出迎えた。
「御無事で何より」
「ただいま、バートン。お土産持ってきたよ」
「これ以上お土産はいらないっすよ……まったく……外周りに行く度にお土産持って帰るんだからよ……」
黒づくめバートンはブツブツと文句を言いつつ、籠の中のお土産に目を向ける。
「今度は何すか?足を怪我した巨大ニワトリすか?それとも背骨を折ったワニっすか?」
何か良く分からない内容だが、過去にデレクシスが持って帰ったお土産らしい。