クラスタ-4
何がさすが、なのかと言うと、パルの魔物の気に晒されておきながら平気なテオだ。
パルがどんなに必死に魔力を抑えても、溢れ出るオーラは人間の許容量を越えていた。
ピィと羽馬は平気だったが、テオ以外の人間は近づくだけで気分が悪くなる。
育ての親が魔物であるテオだからこそ近づけるのだ。
「パルって……やっぱり魔物なんだ……」
自分とは相容れない部分を目の当たりにし、リュディは寂しく顔を伏せる。
大好きな親友が大変なのに、何もしてやれない自分が悔しい。
「適材適所というものですよ、リュディヴィーヌ嬢。貴女には貴女にしか出来ない事があります」
ランスは優しい微笑みを浮かべて、じっとリュディを見つめる。
「ランス様」
真摯な眼差しに思わず見とれたリュディの手を、ランスはそっと握った。
「例えば、私の心を癒して頂くとか……ぶっ」
しかし、言葉の途中でリュディの反対の手がランスの顔を塞いだ。
「……嫌です……」
「ああ、そんな事言わずに……そうそう、先程弓で少し指を弾いてしまいましてね……」
「はい、薬」
「出来れば、そのしなやかな指で塗って頂きたいのですが……」
「遠慮します」
「リュディヴィーヌ嬢〜」
最近お馴染みになった光景……全く相手にされてない主に若干の不憫さを感じながら、ノアは後に続くのだった。
ベキベキベキ
密林に繁る大木を押し倒し、暗褐色の鱗がうねる。
「頭ぁどっちだよ?!」
勾配の激しい斜面を滑り降りながらテオが叫んだ。
「こう何重にも囲まれていると分からないねえ」
ランスは羽馬を巧みに操りながら呑気に答える。
ランスの前にはリュディが座っており、舌を噛まないように必死になって羽馬にしがみついていた。
「段々範囲が狭くなってます!」
もう1羽の羽馬にはノアが乗っており、こちらも中々の手綱捌きだ。
「見りゃ分かるっつうのっ!!」
テオはギリッと歯噛みして木々の間から見える鱗を睨んだ。
今度の魔物は巨大な蛇……だと思う。
何せ暗褐色のぬめった鱗をもった胴体しか見えないのだ。
その胴体は樹齢100年を超える丸太程の太さを持ち、それが波のように何重にも重なっている。