クラスタ-5
前後左右どこに行ってもその波はあり、すっかり囲まれているのが分かる。
多分、物凄く長い蛇なんだろうがどっちが頭でどっちが尻尾なのか……胴体に乗って辿ってみようともしたのだが、ぬめる身体は滑りが良くて数歩で落ちた。
更に悪い事に、囲まれている範囲が狭くなってきている。
全速力で逃げているのに、獲物を囲んだまま同じ速度で移動し、範囲を狭めてくるなんて……さすが、捕食者。
「って、感心してる場合じゃねえぇっ」
テオは自分の足で走りながら横を滑る様に走るピィを見る。
ピィにしがみついているパルの顔が険しい。
目がギョロギョロと獲物を探すように動いていた。
気が高ぶっている……このままではパルの身が持たない。
テオはザッと足を滑らせて止まると、腰に挿してあるサバイバルソードを2本共抜いた。
「道が無ぇなら作ってやらぁっ!」
「なっ?!」
吠えたテオに驚いたノアが慌てて羽馬を急停止させる。
「無茶ですよ!」
「うっせぇ!逃げ切るのも無理だろうが!なら、逃げねぇ!」
テオはそう答えると1番近くにある暗褐色の胴体にサバイバルソードを振り下ろした。
ブシュウッ
サバイバルソードが胴体の半分ぐらいまでめり込み、紫色の体液が吹き出したが相手はびくともしない。
それどころか、サバイバルソードを刺されたまま動いていた。
「わったった」
テオは慌ててサバイバルソードを抜いて構え直す。
同じ箇所を何度も叩けばいずれ胴体が切れるだろうと思っていたが、これでは何処を叩いたのか直ぐ分からなくなる。
「なら……」
テオはサバイバルソードを2本共、胴体の横に刺して蛇が動く方とは反対側に走り出した。
胴体に乗って走るのは無理かもしれないが、胴体に沿って行けばどうにかなる。
『ケシャアアァアァ』
さすがの蛇もこれは痛かったらしい。
どこからか空気を裂く様な声がして、身体が大きくのたうち回った。
「だあっ?!」
テオもサバイバルソードごと振り回され、空中に放り出された。
「テオドアさん!」
ノアは急いで空中浮遊の呪文を唱え、印を組む。
「浮!」
(間に合って下さい!)
突き出したノアの右手から、魔力が放たれてテオに向かう。