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透明な滴の物語U
【同性愛♀ 官能小説】

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カーテンの向こう側で-2

バケツの外からでも青いプラスチックの下半分が黒ずんでいるように見え、中の惨状は見なくても予想できた。
「いや。いやです…」
祐梨は顔を背けた。
すべてを破壊し尽くされ、もう何も残っていない祐梨の城だったが、かろうじて残った羞恥心の残り火が一瞬だけ燻ぶったのである。

聡美はバケツの取っ手を持ち、上げたり下げたりした。
バケツが上下に揺れるたび臭気が拡散するように思える。
「重い…」
聡美がつぶやいた。
何気なく言ったその一言は、祐梨の心の中で複雑に作用し決定的なダメージを与えた。
(もうダメだ。終わった…)
祐梨はそう強く理解した。
この戦は勝負がついたのだ。
たったの先ほどまで自分の腹の中に蓄えてあったものが外界に引き出され、グロテスクな姿をさらしていることが何よりも信じられなかった。
聡美は祐梨に攻め込み落城させた。
祐梨のはらわたの中から茶褐色の汚物を引きずり出し、今、戦利品のように高々と掲げている。
祐梨は、自陣の領土をすべて失い聡美の占領下に置かれたことを思い知ったのである。

頭がくらくらしてきた。
四つん這いの自分を支える腕にも力が入らなくなってきた。
祐梨は力を失うと、よろよろと崩れ落ちた。
聡美が抱える青いバケツの下で、祐梨は白い下半身をむき出しにしたまま眠るように横たわってしまったのである。

恵子と聡美は祐梨をベッドで休憩させることにした。

恵子は医務室内の休養ベッドに横になる聡美と祐梨を見下ろしていた。
二人はひとつのベッドに一緒に寝ている。
「祐梨さんは疲れちゃったのね。血圧には問題なかったし、少し休めばまた元気になると思うわ。聡美、あとはよろしくね」
「分かったわ。祐梨が回復するまで一緒にいるから」
恵子は目隠しのカーテンを引くとその場を立ち去った。
扉の近くにある蛍光灯のスイッチをオフにし、暗くなった室内を見回す。
二人が休んでいるベッドサイドの電気スタンドだけがカーテン越しに灯っていた。
恵子はそのまま廊下に出て医務室の扉を閉め、「休養室使用中」の札をドアノブにかけた。
そしてニヤリと意味有り気な笑みを浮かべると、廊下を歩いて去って行った。


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