本当の気持ち-16
もちろん、顔も見たくない、話も聞きたくないって言われる可能性の方が高い。
だったら、直接言えないのは不本意だけれど、電話越しででも自分のしたことを謝って、気持ちを伝えた上でキッパリ振られるつもりだ。
結果はどうあれ、あたしは本気で駿河を好きだって知って欲しいから。
店長は、やっとあたしが決意したことに満足したのか、少し遠い目で微笑んでは頷いている。
「古川さん、やっと自分の気持ちが見えてきたんだね」
「はい、いつまでもグダグダ言っててすみませんでした。店長がキレてくれたおかげで目が覚めました」
あれだけモヤモヤしていた心が、取るべき道が見えた途端に一気に晴れ晴れして、あたしは彼にVサインを送った。
「じゃあ、駿河くんにはなんて言うつもりなの? ちょっとここで練習してみ? 古川さんって言い訳がましいからごまかしそう」
突然の提案に面食らったものの、今のあたしには、もう迷いはない。
「ごまかしたりなんてバカな真似しませんよ。ちゃんとアイツの目を見てストレートに言ってやるもん。『あたしは駿河が大好き!!』ってね!」
この迫力に圧倒されたのか、下唇を噛み締める店長と、仁王立ちになってビシッとそんな彼の顔を目がけて指差しをするあたし。
本番さながらに決まった、と自負している、その時。
フッと小さく笑うあたしの背後から、
「……そこは名前で呼んで欲しいんだけど」
と、ボソッとこもった低い声が聞こえてきたと同時に、店長が盛大に噴き出している様子が目に飛び込んできた。