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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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本当の気持ち-15

「古川さんは松本さんのことを言い訳にして、告白することから逃げてるだけなんだよ。君は、誰かに好きって言ったことないだろ?」


「は、はい……」


「まあ、告白ってすごく勇気のいることだし、臆病になって当然だよ。でも、それじゃいつまでも欲しいものは手に入らない。恋愛に関しては『察して』なんて、通じないんだよ? ちゃんと言葉にしないと」


店長の言葉が、ジワリジワリと胸に響いて来て、あたしは唇を噛み締めて小さく頷くだけだった。


不思議と彼の言葉にはあたしの気持ちを後押しする力があるみたいで、ブレまくりの自分の気持ちに一本芯が通ってきたような気がしたあたしは、そっと缶を持つ手に力を込めた。


そんなあたしに、さらに店長は続ける。


「自分の気持ちを隠してイイ子でいたって、絶対後悔するよ。古川さんは、そこまでして駿河くんより松本さんに好かれたいの?」  


店長にそう言われ、頭の中に一筋の光が差し込んできたような、そんな気がした。


あたしが本当に好かれたいのは……。


最後まで言わずともその答えはハッキリ頭の中に描かれた。


それとともに胸の中で沸き立つ想いがメラメラ燃えたぎってあたしの闘志に火をつける。


……駿河、あたしはアンタが大好き。


あたしはベンチの上にコン、と空になったアルミ缶を置くと、背筋をピンと伸ばして店長に向き直った


「店長、あたし……駿河に本当の気持ちを伝えます」


ようやくあたしは自分の気持ちが定まった。


覚悟を決めた女の顔はとても勇ましく映ったのか、彼はなんだかニヤニヤ含み笑いをしている。


「今から告るの? もう帰っちゃったんじゃない?」


駿河達と別れてから、すでに30分は経っている。


里穂ちゃんの告白がどれほど時間がかかったのか、どこでどんな風に告白したのか、結果はどうなったのか、一切知らない。


もしかしたら告白が上手くいって、今頃二人はイチャイチャしているのかもしれない。


それを想像すると胸はキュッと痛むけれど、そうなったらそうなったで仕方ない。


自分の正直な気持ちだけ伝えて、あとは諦める努力をしよう。


腹を決めたあたしは、ゴクリと生唾を呑みこんでから、


「……駿河に電話してみて、話を聞いてくれるようなら、アイツの家に行ってでも伝えて来ます」


と静かに言った。







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