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山だし
【その他 官能小説】

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山だし-10

 橋のたもとから下を覗くと真っ暗で何も見えない。目が慣れてくると街路灯の明かりでうっすらと見通せるようになった。
 おそるおそる名前を呼んだ時、車が通って消されたので、今度は少し大きな声を出した。そうしたら、
「彼の返事が聞こえたの。こっちだよって」
凍る土手を慎重に下りていった。

「来てくれたんだね」
間違いなく彼の声。
「お返事ありがとう。嬉しかったわ」
「僕こそ嬉しかったよ。サトエさん」
近づいていくと暗がりの中に彼の影が浮かんできた。胸が押しつぶされそうな歓びが広がっていった。

「サトエさん。こっち」
顔の輪郭が判るまで距離が迫った時、はっとして足を止めた。
「彼の足下に誰かがうずくまっていたの」
それも一人ではない。急に大きな男が三人立ちはだかった。
「何?」
思わず後ずさりしていた。と、ほぼ同時に男たちにつかまった。
 突然のことで声が出ない。それに彼がいる。何かふざけているのかと思った。だがすぐにただごとじゃないとわかった。後ろに回った男にコートをはぎ取られ、胸を鷲掴みにされて引き倒された。
「オッパイでかいぞ」
「やれ」
スカートが捲られて下着が引き下ろされる。恐怖の中、やっと声を振り絞った。
「痛い!やめて!」
「おとなしくすれば痛くないよ」
「やってやるから。男が欲しいんだろ。相手にしてもらえるだけありがたく思え」
「○○君、助けて!」
眩しい光が目に入った。懐中電灯のようだった。彼が持っていた。
 力任せに脚を開かされ、
「おう、すげえ、もじゃもじゃ」
「照らせ」
「俺からだ」
直後、のしかかられて焼けるような痛みが走った。
「いやあ!」
他の二人に押さえられて身をよじることさえできない。
「やめてえ!」
「口を押さえろ」
布が口に当てられた。息が苦しくなって踏ん張るように突っ張った。
「おう、すげえ、イク」
ぐっと重い体が重なってきた。

「早くしろ。交代だ」
すぐに二人目が入ってきて、あっという間に呻きを上げた。三人目となると力が抜けてされるがままだった。
 やっと目を開けると少し離れた所に彼がいて、じっと見ていた。時間にしたらわずかなものだったろう。しかしその感覚がなかった。
「お前もやれよ。サトエちゃんだぜ」
「俺はいいよ。不自由してないから」
彼が笑いながら言うのが聞こえた。
「サトエ、心配すんな。コンドーム着けてたから」
「いい経験したと思いな」
 四人の足音が聞こえなくなっても動くことができなかった。手足の感覚がなくなっていた。寒さのせいもあったが、ショックで頭が働かなかった。

「涙が止まらなくてね。悔しくて、惨めだったけど、それより自分の愚かさが情けなくて……」
川の流れの音を聞きながら、死にたいと思ったけど、その気力もなかった……」

 話し終えて、サトエは溜息をついて、また仰向けになった。
「……というお話です……」
無理に笑った顔が歪んで見えた。

 後悔しても遅かったが、私は訊いたことを悔いた。
言葉を探しても見つからない。
「そいつら……」
言いかけてあとが続かない。
「里見くん、話はおしまいよ」
「でも、ごめん……」
「いいのよ。今はあなたといるんだから。それでいい……」
 私はたまらなくなってサトエを抱きしめた。胸に顔を埋め、耳に口づけた。きれいな耳である。そこだけ子供みたいな可愛い耳だった。
(面白半分に話を強要するのではなかった……)
「ごめんね……」
「里見くん……」
耳の中に目尻から一筋、涙が伝って流れていった。


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