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『graduation』
【青春 恋愛小説】

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『graduation〜ウェディング〜』-9

雪見との飲みは、夜からだから問題はないのだが、できるだけ体力は回復させておかなければならなかった。どうせ『飲み比べ』になることは目に見えている。

「女?東京最後の夜だもんな。ナカナカ佐伯君もやりますなぁ」

からかってくるツヅキに胸がムカムカしてくる。お前だけ1人幸せになりやがって。

飲んでいたことも手伝ってそのイライラは最高潮に達した。

「雪見だよっ。明日の夜、飲む女。」

気付くと投げつけるように言っていた。

「………。」

電話の向こうでツヅキが言葉を失ったのが分かった。
フォローなんてしてやらない。絶対。

電話にしては不自然な沈黙が沈んだが、俺はそのままにしていた。



「あの女、元気にしてる?」

しばらくして、ようやくという感じでツヅキがやっとそれだけを呟いた。

「まぁ生きてはいるよ。元気かはともかく。」

俺は意地悪く言ってやる。

「そうか......」

それ以上、ツヅキは何も聞かなかった。どこで再会したのかも、明日、どうして飲むことになったのかも。

「お前は亜紀ちゃん幸せにしてりゃいいんだよ。」

俺は棄て台詞を吐くと、電話の切ボタンをプチっと押した。

酔いが相当回っていた。




“昨日は言い過ぎた。ごめん。”

朝起きて1番にしたのはツヅキに謝りのメールを入れることだった。

それから部屋の最終チェック。

布団以外はテーブルも何もない部屋。その布団も明日はごみ収集に来てくれる手はずが整っている。
広島にはベッドが既に届いているはずだ。


様々な雑用をこなして6時30分。研究室に行くと、雪見はいなかった。

二階堂教授にお別れの言葉と、大学3年生のゼミから数えて7年間お世話になった御礼を述べた。研究会で月1は東京に戻ってくるが、これまでのように毎日お世話になるわけではない。
9年もかけて、やっと俺もこの大学から卒業というわけだ。


「広島は牡蠣が名産だったよな。佐伯君。」

俺はしっかりと牡蠣を送る約束までさせられ、研究室を後にしようとする。7時近く。雪見はいつもの時間に来ない。


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