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『graduation』
【青春 恋愛小説】

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『graduation〜ウェディング〜』-8

俺は無難にスピーチをこなし、それなりに笑いをとって、役目を無事に勤め上げた。

2次会も終わり、誰からともなくサークルの同期だけで飲もうということになり、3次会が開かれた。

そんな中、雪見の話が出たのは必然だったと言っていい。

「雪見、なんで連絡とれなくなっちゃったんだろ。」

ぽろりと誰かが言い出した。

「私、結構ショックだったんだよなぁ。それなりに仲良いつもりだったから。」

副会長をやっていた大森未来が嘆いた。

「私も。」
「俺も。」

次々に同じ様な発言が出てくる。しかし誰一人、雪見がサークルから消えてしまったことの理由を知る者はいなかった。

「都築となんかあったんじゃねえの?ほら、卒業式にさ...」

会計だったヤツが、突然言い難そうに声を顰めた。

「あれは都築が悪いんだよ。彼女がいること公表しないから後輩で変なコが出てきちゃって、裏で本人の意思ムシして取り合いみたいな喧嘩とかしてたみたいだし。そういうの押さえるために叱ったんでしょ。」

書記だった里美がもっともなことを言うと

「でもさぁ男としてはああいうこと皆の前でバラされると...なんつーか沽券に関わるわけよ。」

渉外担当だった男が頭を掻きながらツヅキの肩を持った。

「どちらにせよ、雪見と都築が喧嘩していたことは確かだね。都築、4年の時、雪見のこと無視してたもん。」

広報担当の明の言葉に数人が頷いた。

……知らなかった。1番側にいたのに。

あの優しいツヅキが人を無視するなんて、信じられない。

よっぽど嫌いだったか、それとも―――よほど好きで、それでも付き合えない事情があったから、突き放した?

「まぁとにかく、そんな大人気ないコトしていた都築もいまや立派に結婚しました、と。それでいいじゃん。今が幸せなら。次に続きたい奴!?ハイっ!俺!?」

会長だった浅野陽一が巧くまとめて、雪見の話はそれで終った。

俺は彼女に再会した話を誰にもしなかった。




家に帰ると携帯が赤くランプをともして震えた。

慌てて見ると、ディスプレイに悪友の番号が羅列されている。

「なに?新婚初夜に電話なんかしてくるなよ」

「いや、お礼だけ言っておこうと思って。スピーチありがとな。」

時計を見ると一時だった。丁度俺が帰ってきそうな時間に電話。そう、ツヅキは本来こういう気遣いのできる男なのだ。

「俺も2人を祝福できて嬉しいよ。お前、早く亜紀ちゃんとこ戻ってやれよ。こっちも明日、用事があるんだ。」


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