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透明な滴の物語U
【同性愛♀ 官能小説】

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狭い家-2

衝突しそうになると、必ず姉の祐梨が引いていたのである。
いつも妹に譲歩してばかりで、親からもそのことを指摘されたことがあったが、祐梨には自然な行いだった。
祐梨はもともと優しい性格なのである。

あまり箸の進まない妹を見て姉が気遣う。
「でも、本当に具合が悪そうよ。麻衣ちゃん、大丈夫?」
「うん。ちょっと熱っぽいの」
「あら、そうだったの…。大事にしなきゃね。ここのところ、急に朝晩寒くなってきたからね」
祐梨は妹を気遣った。
妹は体調不良の原因が自分のせいではないと言ってくれたが、熱っぽいと聞かされ祐梨の心配は収まらなかった。
それに、妹は否定するが、昨夜遅く帰宅した時に起こしてしまったことも間違いなかった。

そもそも、深夜帰宅がこんな問題を引き起こす原因は、この家の構造にあった。
長年住んでいる古い団地の一室における姉妹の部屋は、薄い「ふすま」で仕切られただけで、一部屋を共有しているようなものだったからである。
音は筒抜けで、夜は隣室の明かりも漏れてくる。
ふすまは開けようと思えばいつでも開けられる。
二人とも自分が個室を持っているとは思っていなかった。
二人がまだ幼い頃は、今の姉の部屋が姉妹共同の部屋だった。
そこで姉妹は仲良く寝起きしていたのだ。
しかし、姉が大きくなり勉強が忙しくなる頃に、隣の部屋が妹に分け与えられた。
それでも、姉妹は個室を与えられたというよりは、むしろ二人の部屋が拡大したと感じ、互いに喜んだのであった。
今でこそ普段は閉じられたままだが、ふすまも寝る時以外は開放されお互いが自由に行き来していたものだった。
そうして姉妹は成長してきたのである。

しかし、この部屋は二人が共に生活していくにはそろそろ限界がきていた。
社会人の祐梨は残業で帰りが遅く、しばしば深夜帰宅になる。
そして妹の麻衣は来年には高校3年生となり大学受験を控えている身である。
特に麻衣が志望している外国語学部のある大学に入るには努力が必要であり、勉強に専念できる環境を用意してあげる必要があった。
睡眠を妨げられる部屋など、もってのほかである。


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