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坂を登りて
【その他 官能小説】

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前編-3

(2)


 不思議なもので、この日以後、解禁を待っていたように『大人の知識』が次々となだれ込んできた。ほとんどが友人たちからの伝聞による継ぎはぎだらけの不完全なものではあったが、男女の営みに思いを馳せるには想像を挟み込む余地があった方がむしろ昂奮を高めることになった。

 上の兄が東京へ出たのはこの頃である。高校を出て二年ほど店を手伝っていたのだが、普通の勤めがしたいと言って家を出てしまったのだ。下の兄も間もなく東京へ行くことになったが、これは蕎麦屋を継ぐための修業で、上野の老舗蕎麦店に住み込みで働くことになったのである。

 隣室に気兼ねがなくなって、彼女の夜の楽しみは次第に激しいものになっていった。生来の性でもあったろうか、まだ未知の行為を想像して指を使い、その様子を手鏡で見ては昂奮した。
 
 ゼンリョウから告白されたのはそんな性への興味に日夜浸っていた三年の夏休みのことだった。
 本屋からの帰り道、気配を感じて振り向くと、半ズボンにランニングシャツの彼がいた。
 福山善良は寺の一人息子で小柄な大人しい男子だった。クラスで一番勉強ができた。そのゼンリョウが真剣な顔をして近寄ってきて、
「君が好きだ……」と言ったのである。思わず笑いそうになったが、それは自分の動揺を隠すためのとっさの表情だった。好きだと言われたのは初めてであった。
 ゼンリョウは怖い顔をしていた。小夜子はじっと彼の目を見つめ、答える代りに、
「城山に行きましょう……」
そう言って先に歩きだした。

 十分ほど行くと礎石だけが残っている城址があって、こんもりと木々に囲まれている。そこに誘ったのは、道端でやり取りすることではないと思ったからで、他に意図はなかった。

「ゼンリョウ君、勉強してるんでしょう?」
小夜子は関係のないことを言ってはしばらくぶらぶらと歩き回った。城山の上は平坦になっていて樹木もまばらである。
「受験する人、何人ぐらいいるのかしら……」
 後ろから付いてくるゼンリョウは何も答えない。どんな顔をしているのか……。そう思った時、
「ぼくは君が好きだ」
背中から強い言葉を受けてやっと立ち止まって向き合った。

「それ、お付き合いするっていうこと?」
ゼンリョウは真っ赤になって俯き、黙って頷いた。他の男子と比べると腕も足も細くて小学生のようである。
「でも、いまは勉強しないといけないんじゃないの?」
「それはそれでちゃんと出来るよ」
「あなたはいいけど、あたし、頭悪いから」
「ぼくが教えてあげるよ」
頬から首筋に汗が流れ、さらに胸元に伝った。彼と肩を触れ合って二人きりで夕暮れを歩く光景が浮かんだ。息の吹きかかるほど近くで体温を感じながら。……

 熱くなった。気温のせいではなく、体の奥のほうが変に熱かった。口をきちっと結んだゼンリョウと目を見合せているうちに小夜子は自分でも思いがけないことを言い出した。
「お付き合いして、何が知りたいの?」
「何がって……」
彼は質問の意味を考えているようだった。

「あたしを見たいんでしょう?」
「……」
その時、小夜子の体には大人の反応の兆しが起こっていた。
「来て……」
彼の手を取って歩き出した。汗ばんだ彼の手、いや、小夜子の手もべっとりとして熱かった。動悸が早鐘のように打っている。

 崖に近い灌木に囲まれた一画に入り込むと彼女は腰を下ろした。日差しを遮るものはない。噎せるような草いきれが滞っていた。

「見せてあげるわ。男子は見たいのよね」
小夜子はブラウスのボタンを外してシュミーズがはち切れそうな胸を開いた。そして肩ひもをずらすと乳首を覗かせた。なぜそんな大胆なことが出来たのか、わからない。性への好奇心が本能の赴くままに自らを煽り立てていたということになろうか。
 額の汗の粒が流れ落ちて顎から滴っていく。踏ん張ったような顔で見下ろすゼンリョウのうろたえた目が乳房に注がれていた。

「こっち来て」
立ち尽くしている彼を見上げて言った。肩で息をしている。
「そばに来ていいのよ。どう?」
「きれいだね……」
その言葉は疼くほど嬉しかった。
「触っていいわよ」
ゼンリョウは指で膨らみを押してから、摘むように触った。
「柔らかい……とても柔らかい……」
声が掠れていた。

 汗でべとべとの乳房を彼の手が包んだところで、
「君のも見せるのよ」
「え?」
反射的に手を離した。
「お付き合いって、見せ合うものよ」
「何を?」
「男子はおちんちんでしょう」
明らかに動揺したゼンリョウは立ち上がって一歩後ずさった。股間を手で被っていた。

「小夜ちゃんも、見せてくれるの?」
やっとのことで言った感じだった。
「見せているでしょ」
「ちがうよ、アソコだよ」
小夜子はちょっとたじろいだものの、わざと笑いながら、
「今日はだめよ。女子には見せられない日があるの。男子にもわかるでしょ?」
言い逃れて、今度見せると約束すると、
「誰にも言わない?」
「言わないわ。内緒にする」

 ゼンリョウは横向きになってチャックをおろした。少し腰を引いて引き出すと、さらに隠すように心持ち後ろ向きになった。
 小夜子は膝立ちになって彼のズボンを掴んだ。
「見えないわ」
力任せに引っ張ったので、
「あっ」
ゼンリョウがよろけて目の前に一物が反り立った。
「ああ……」
咄嗟に手で隠そうとするのを遮った。まだ成長途中で雄々しさには欠けるものであったが、むろん小夜子にはそんな感想はない。
(大きな芋虫……)
意外に冷静に観察したものだ。
「ふうーん」
手を伸ばして掴む。
「だめ」
腰を引いたので思わず強く握り、扱いたかたちになってしまった。
「ああっ」
水鉄砲みたいに噴射した。小夜子の顔にまで飛び散った。


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