デアイトサイカイ-4
「駆け出し冒険者じゃ役に立たねぇだろうけどな」
「そだね」
「そこは否定しろよそこはっ」
テオは苦笑してパルの頭に拳を付けてをぐりぐりする。
「いたいいたいっ……あっ!見えた」
テオから逃げたパルは砂丘の上に現れた影を指差した。
テオはその指の差す方向を見て、ピュウっと口笛を鳴らす。
「めっずらしぃ〜羽馬(うま)じゃん」
「うま?」
パルは目を細めて影を凝視する。
どう見ても馬には見えない。
「馬じゃなくて羽馬。馬みたいにでっかい鳥だよ」
「鳥ぃ?!」
「ああ。昔はファンにしか居なかったんだけどな。北の大陸の魔物がファンを襲った話、知ってっか?」
「うん。リュディに聞いた」
「そん時、協力してくれた冒険者にファンがプレゼントしたんだと。んで、全大陸に広まったワケ」
各大陸に広まった羽馬は、それぞれの土地で独自の進化を始めた。
寒い地域では熱が逃げないように、羽毛が細かくなった。
雨の多い地域では水を弾くような羽毛になり、足の指の間には水掻きが出来た。
暑い地域では翼が発達して熱を遮る機能を持つようになった。
などなど……それでも繁殖が難しく、とても希少な生き物だ。
「砂漠の羽馬かぁ〜初めて見るなぁ」
テオは目をキラキラさせて影が近づくのを待つ。
羽馬は2羽でそれぞれに人が乗っていた。
砂丘を崩して砂流が起きないようにゆっくりと降りてきた羽馬の動きは、どこか上品で気品さえ漂っていた。
「やあ。ご一緒しても良いですか?」
更に、羽馬の上からかけられた声は男性ながらも涼やかで上品。
「オアシスはみんなのオアシスだよ♪」
来たのが男性だと分かったパルは舌なめずりする勢いで愛想良く答え、テオは相手から見えない位置でパルのお尻をつねった。
「にゃっ」
「?」
小さく声を上げたパルに向かって、羽馬から降りた男性が首を傾げる。
「すげぇなぁ。これ砂漠の羽馬だろ?」
テオは素知らぬ顔でパルの前に割り込んで男性に訪ねた。
「ええ。他の羽馬より暑さに強くて翼も大きいんですよ。足も砂に埋まらないように細かい毛が生えてましてね」
「へぇ」
テオはもっと良く見ようと羽馬に近づく。