デアイトサイカイ-3
ただ、納得はできない。
パルにとって人間とのセックスは食事だし、別に独り占めしようってワケではないのだ。
しかし、人間にとっては重要な意味合いがあり、それは尊重されるべきだとパルは思う。
「いいなぁ」
いつか自分もその意味が分かって、誰かを特別好きになる日がくればいいのに、とパルは呟いた。
「ピピ」
「ん?そりゃ、リュディもテオも特別好きだけど、2人共特別美味しいからだもん」
「ピイ〜?」
「なによぉ?」
パルの顔を覗き込んで疑うように声をあげたピィに、パルは頬をぷっと膨らます。
「ピ」
別に〜、と言うように顔を背けたピィにパルは益々頬を膨らませた。
「なんか生意気〜産まれたばかりのクセにぃ〜」
「ピピピピピィ?!」
パルはピィの細長い身体をわさわさしてこしょぐり、ピィは身体を捩って嫌がる。
「ほらほらほら〜」
「ピイィ〜」
や〜め〜て〜、という感じで身悶えるピィとじゃれていたパルがふと手を止めて視線を上げた。
「ピフッピフッピフ」
ピィはぜーぜーと息を切らせながらパルの視線を追う。
別に何も見えないが、団扇のような大きな耳には砂を踏む音が聞こえた。
「ピ?」
「うん。こっちに来るね。リュディに教えてきて」
「ピゥ」
パルの腕からしゅるりと抜け出たピィは、身体を滑らせてテントに入る。
パルは聴覚を拡大させて砂を踏む音を良く聞いた。
(……?砂蜥蜴じゃないなぁ……かと言って徒歩でもないし……)
尖った耳をピクピクさせて更に詳しく聞こうとした時、その耳をギュッと掴まれた。
「んにゃ?!」
パルは振り払うように自分の耳に手を当てて振り向く。
そこにはテオが苦虫を噛み潰したような渋面で立っていた。
「だあら、そうやってポンポン魔物に変わるなっつうの。誰か来てんだろ?」
パルは耳を手で押さえたまま目と耳を人間形態に戻す。
「リュディは?」
「また寝た。明日には動けるだろうから、明日の夕方に出発するってよ」
話ながら頭を掻いたテオは少し俯いて目だけでパルを見た。
「オレも行く」
「…………」
「色々聞いちまったしな……ほっとけねぇし……」
「うん。その方がリュディには良いかも」
リュディもいつプッツン切れるか分からないし、パルも世間知らずだ。
旅慣れてはいないが男性が居てくれると色々助かる。