ムカシムカシ-6
リュディが持ってくる物は、パルにとっては全部興味深いものです。
それもその筈です……牢の中には何も無かったのですから。
しかし、それらは全て人間が使う物……魔物のパルには小さすぎます。
パルは一生懸命練習して人間に化けれるようになりました。
パルはリュディに外の世界の事を沢山聞きます。
リュディもパルに彼女の知っている事を沢山聞きました。
2人共、お互いが大好きになりました。
そんなある日、リュディが沈んだ顔でやってきました。
「どうしたの?」
パルは人間に化けて、柵の向こうのリュディに問いかけます。
リュディは顔を伏せたまま首を横に振りました。
「何でも無いようには見えないよ?」
確かに顔色は悪いし、落ち着きもありません。
パルは柵の間から腕を伸ばしてリュディの頭を撫でました。
「言って?アタシで出来る事なら何でもヤルから」
リュディはそっと顔を上げてパルを見ます。
「……あの……ね?私……普通の人と違うの……」
「違う?」
首を傾げるパルに、リュディは自分の秘密を話しました……産まれつき両性具有だという事を。
それを聞いたパルは一気に身体が冷えました。
何故なら、リュディを両性具有にしたのはパルだからです。
あの時、呪いをかけた赤ちゃんがリュディだったのです。
人間で初めて好きになった……大好きなリュディの人生を壊しているのはパルなのです。
パルの目から自然と涙が零れました。
それは石の床に次々と染みを作ります。
「……同情ならいらない……」
「違う……同情じゃないよ……ごめん……ごめんね、リュディ」
パルは涙を流しながら全てを話しました。
話を聞いたリュディは下を向いて黙り込みます。
「謝っても無駄だよね……でも、ホントごめん……」
パルは再び孤独な世界に戻る事を覚悟しました。
リュディに酷い事をしておいて、やっぱり会いに来てくれなどムシが良すぎます。
しかし、顔を上げたリュディの表情はパルを責めるものではありませんでした。
「……貴族の中では……良くある事……」
パルは貴族間の争いに利用されただけ、とリュディはパルを許しました。
憎むべき相手は奥様であり、旦那様なのかもしれませんがリュディにとってはどうでも良い事でした。