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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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ミドリノヒミツ-17


「ところで……素晴らしいとはどういう事ですかな?ランス殿?」

 エザル警備隊長の言葉に、厳かな雰囲気を一掃したランスがパッと顔を上げる。

「あのですね、これは『吸血蔦』と言われるものでして、通常は草原に多く生息している種類です」

「草原に……ですか?」

 このエザル警備隊長は砂漠地域から出た事が無く草原を知らなかったのだが、普通の地域ではこんな物騒な植物がうようよ居るのかと思うと背筋が寒くなった。

「ええ。それが砂漠で見つかったのが素晴らしい。それとですね、この植物、普通はこれ位のサイズなんです」

 ランスは地面に手を置いてから、助手の膝まで動かすと手を止める。

「はい?」

 警備隊長は思わずランスの手と、目の前にある巨大な植物を見比べた。

「普通の『吸血蔦』は死体とかに寄生して育ちますので、生きた人間に寄生する事はありません」

「じゃあこれは……」

 吸血蔦では無いのでは?と警備隊長は首を傾げる。

「いえ、紛れもなく『吸血蔦』ですよ?大きさを除けばね」

 普通のサイズは動く物に寄生しても直ぐに振り落とされるが、大きければ生きた物にも寄生出来るのだ。
 ランスにとってこれは大発見であり、興奮もしてしまう。
 だから、素晴らしいのだ。

「私の仮説ですけどね?魔草と組み合わせればここまで大きくなるかと思いますよ?」

 魔草との組み合わせで急成長させる技術はいくつかある。

「だから、これを育てたのは魔法使いか薬剤師……って所ですね」

 薬草や魔草に詳しい人種を選んだランスに、警備隊長は軽く頭を下げた。

「成る程、助かりましたランス殿」

「いえいえ。お役に立てて光栄ですよ。お仕事頑張って下さい」

 ランスはニコニコと答え、立ち去ろうとしたが……。

「良ろしければ、少しサンプルをもらっても?」

 と、立ち止まる。

「少しなら構いませんよ」

 警備隊長は苦笑すると、ここら辺なら良いと言って仕事に戻った。
 ランスは鼻歌まじりで『吸血蔦』の葉の部分、蔦の部分と小さな革袋に小分けに入れていく。
 助手である筈の少年は黙って見ているだけ……助手というワケではなさそうだ。

「……ミドリの悪魔だ……」

 ランスが蔦の収集をしている少し横で、1人の男が膝を抱えてガタガタ震えていた。

「?」

 ランスは収集しながらそれとなく聞き耳を立てる。



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