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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜金美花・下編〜-8

100年前のあの夜以来、何と無く夜を共にして昼間はお互い澄ました顔をしていた。 紅様の、シャナの前で見せる表情なんて見たこと無い。
日が暮れて、月が輝きだした頃になって、彼はやって来た。
『やぁ、アルネちゃん。
こんばんわ。』
窓の外に立って微笑んでいるキシン。
思ったのだが、キシンはもうちょっと煩い性格だった気もする。
それが、なんだか穏やかで優しくなっている。
(幽霊って………やっぱり物静かなのね………)
そんなことを思いながら、キシンを中に招き入れて色々と話をした。
キシンが居なかった間に起こった出来事。 楽しかったこと、悲しかったこと。
シャナのこと、紅様を諦めたこと………
キシンは自分について特に語ろうともせず、始終私の話をよく聞いて、そして笑ったり慰めてくれた。
それはシャナの登場以来の私にとって、それは心休まる一時だった。

『じゃあ………また。』
小一時間話した後の別れ際。
キシンは笑顔でそういうと去っていった。
また………と。

それから数週間、私は毎晩キシンと会って他愛もない話をしていた。
だが、ある日の私は非常に憂鬱だった。
(………一昨日も、またねって言ったくせに………)
昨日の晩、キシンが来なかったのだ。
一昨日の晩には別に変わりもなく、また来ると言っていたのに………
『………』
『……………(汗』
現在の状態は中々見られないものだ。
真っ昼間から何やら椅子に座って放心状態の私の膝にゼロが座っている。
ゼロ、また触手に捕まってしまったらしく、未だくすぐりもせずにただ膝の上に乗せられている状況に緊張した表情をしていた。
いつ、自分の肩を掴んでいる私の両手が動きだして、自分を笑死させるか。
そんな緊迫感で一杯のゼロだった。
『………はぁ。』
私が溜め息をつくとゼロがビクリと震えた。
私の頭の中は、キシンで一杯だった。
(なんだか………キシンってば紅様に似てる気がする。)
優しくて優しくて優しくて。

だが、キシンはそれから一週間経ったも私の前に姿を表さなかった。
(………私、嫌われちゃったのかしら………)
ふと、そんな考えが頭をよぎった。
ふと外を見ると、シャナが紅様と一緒に楽しそうに遊んでいた。
昨晩、紅館に雪が降ったので雪遊びをしているのだ。
『………クシュン!』
一方私は雪の降るなか、キシンが来るかも知れないと一晩中窓を開けていたため、少し風邪気味だった。
『………あら?』
ちょっと床を見ると、ゼロがヒクヒクと痙攣していた。
実は憐れなゼロ、放心アルネの触手に警戒しつつもつい捕えられてしまい、もう痙攣することしか出来ないくらいくすぐられたのだ。『すみませんアルネさん、ゼロ知りま………うわっ!』
そこへゼロを探しに来たスーがゼロを見つけた。
『………見事に逝ってますね………』
笑死しているゼロを指先でつつきながらスーが呟く。
『そうみたい………ね。』
スーはなんだか呆れながらゼロを抱えて、部屋を出ていってしまった。 だが、私はまた放心モードに入っていた………
(キシン………やっぱい他に好きな女の人が出来たのかなぁ………)


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