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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜金美花・下編〜-2


ガヤガヤと騒がしい商店街を抜けると、そこは奴隷市場だ。
奴隷商人達がそれぞれの奴隷を並べ、売りに出しているのを私は見もせずに先に進む。
いや、見れないのだ。 見て、変に感傷しても私にはどうしようもない。
実は、私はここが好きでは無い。

やがて見えてきた大きな建物に私は入って行く。
ここはオークションハウス、高値の奴隷ばかりを競売している場所だ。 オペラ劇場のように、高価な内装と椅子がある。

入り口で競売参加の手続きを受け、チラシを貰い一番前の席に座った。
『今日のエルフは一人、処女、黒髪、黒目、標準体型、非調教………』
チラシに書いてあるエルフの情報を呟く。
嫌な予感がしていた。
丁度100年だし、エルフだし。
そのエルフの情報を見て、それが深まった。
(黒髪……)
エルフには珍しい黒髪。
そして、今、私の目の前にそのエルフが立った。
(………シャルナ様………)
一目でわかるほど、そのエルフはシャルナ様に似ていた。 髪は短いが、その他は全て同じだ。
しかし、何故か雰囲気が違うような気がした。

競売が始まり、エルフの値はどんどん上がっていく。
『800万。』
現在の値の四倍を売り子に言う。
しかし、その値はすぐに書き換えられてしまう。 成金風の商人が値を釣り上げた。
私も対抗してさらに高い額を言う。 相手は所詮商人、資金は圧倒的にこちらの方が上だ。
だが、値を上げるごとに私の中でまた悪魔が囁きだした。
「落札すれば、紅様はこの子に取られる」
『…………』
2000万の値を商人が言った。
(次は2500万と言わないと………)
「紅様を取られても良いの………?」
『………』
私の口は開かない。 言わないといけないのに、開かない。
エルフがこっちを見ている。 悲しそうな目だ。
(やめて! 私を見ないで! 私は………私は………)
ギュッと手を握り締める。 やがて、売り子はカウントをとりはじめ………
『ございませんか? はい! では、此方のエルフはソチラの商人様がらくさ…』
私は………また自分に負けた………
『待て!』
ビクリと体が震えた。 聞きなれた声、このエルフに一番会いたいと思っている人、そして今の私が一番会いたくない人。
私は立ち上がり、紅様の元へ歩いて行く。
だが、内心はその場を逃げ出したかった。 私は初めて紅様の命に背き。
『アルネ、落札してくれるよう頼んだはずだが?』
紅様は至って普通に尋ねてきたが、私には刃のように刺さる。
『それが、予算額の1950万を超えました・・・』
そして私は初めて紅に嘘をついた。 それも、自分でも馬鹿馬鹿しいくらいくだらない嘘を。
上限など無いと言われている。 予算額など存在しないのに………
紅様はふぅと息を吐き、一言だけ、そうか、と言うと売り子の方へ歩いていった。
(私……最低だ………)
紅様はあのエルフを100年間、一日千秋の思いで待ち続けただろう。
それを私に買うように、託したのを裏切ったのだから。
しかし、紅様は私の心中を察したのだろうか? 見えすいた嘘を咎めない。
あるいは………咎める暇すら惜しいのか………
『アルネ、馬車の用意を。』
はい、と紅様に答える。
紅様はエルフの方ばかり見ていた。
外に馬車を用意して待っていると、紅様がエルフを抱えて出てきた。


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