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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜金美花・下編〜-3

エルフの名前はシャナ。
帰りの馬車での会話は楽しいものだった。 何より、紅様が私と居る時よりも楽しげに笑っている。
私もそんな紅様の様子が嬉しくも思えたが、自分の前では見せなかった表情に嫉妬が混じり複雑な気持ちだった。
肝心なシャナは、シャルナ様に似ているとも言えるし、似てないような気もする子だ。
あえて言うなら、これからシャルナになる。 そんな感じ。
(まだ………幼さが残っているわ。)
だが、紅様はそんなシャナに完全に夢中だ、そして………
『………!』
紅様は突然シャナにキスをした、私に見せつける気はないのかも知れないが、私の目の前でだ。
手に力が篭り、拳を握り締める。
(貴方は………もう私を見ていないのね………)
紅館に到着した時、きっと私は酷い顔をしていたと思う。
ただ紅様の後についてシャナを部屋に案内した後で私は紅様に声をかけた。
『・・・溺愛ですね、大公爵様?』
そう言われた紅様は何も言わずに歩き出す。
『今まであなたのお側で数々の奴隷として買った女性を見てきましたが、初めてですね。 一日目にしてキスをなさるとは。』
(違う………)
溜め息を吐いた後に紅様が口を開く。
『駄目か? 買った奴隷に主人がキスをするのが?』
私を見ずに、まったくの無表情でさらに歩き続ける。
『キスは駄目と言うわけではありません。 ですが、嘘はいけません。 紅様。』
私は小走りに紅様を追い越し、そして振り返り、ウェザを見つめる。
『やはり、似ているからですか? あれから100年、予言通りですね。』
(違う。)
・・・紅様の表情は変わらない。 何も言わず、何も伝えずに私を置いて先に歩いていく。
『あの子は何も知らないのですよ。 あなたが自分の延長線の先ばかり見ていることに、いずれ気が付きます。』
(そうじゃない………)
紅様の猫耳がピクリと反応した。
『・・・私の愛を受けて良いのは、ただ一人、だ。 100年前にも言っただろう。』
その言葉を聞いた私は叫ぶ。
『あなたはあなたのためだけに、あの子を犠牲になさるのですか!?』
(違う!)
紅様は動じなかった。 ただ一言。『100年前の通りだ。』とだけ言うと、去って行った。
後に残された私は立ち尽くしていた。
『違う………違う………こんなことが言いたいんじゃない………』
涙がポタリと床に落ちる。
『私は………貴方がいなくなったら、私はどうすれば良いの? 紅様………』
紅様とシャナ。
二人の中に入り込むなんて私には出来そうに無い。 シャルナ様にも戦えなかったのだから、シャナにも勝てない。 そう決めこんでいた。
そして私にさらなる追い討ちをかけるようなことが夕食で起こった。
食堂の座る場所、100年間の空席を紅様はシャナで埋めた。
最初それを見た私は驚いた。 紅様がここまでシャナを思っているのか。
そして、これはシャナの存在を紅館の皆に伝える意味もこの行動には含まれていたのだろう。
紅様の右隣……シャルナ様の席に座るシャナは多分急に変わった周りの雰囲気に戸惑っているだろう。
(紅様………貴方は本当に100年前と変わらないのですね………)
シャルナ様一筋で………今はシャナ一筋に愛し続けるのだろう。


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