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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜金美花・下編〜-11

『ふわぁ………紅様ってばしつこかったわぁ………』
だが、それだけ心配されているのだと思うと、それも悪くないのだが。
(でも、相手が幽霊じゃあ………ねぇ………)
今夜もキシンは来るだろうか?
『来ない………かな。 あんなことがあったら………』
不味い、また気持ちが沈んできてしまった。
とりあえず窓を開けて、キシンを待つことにした。 まずは謝るのだ。
(だけど……なんて言おうかしら?)
もう二度とキシンをオカズにしません、とは恥ずかしくて言えない……
(謝るのも辛いわ……いろんな意味で………)
やがて、日が完全に暮れて月が輝きだした。
キシンはそろそろ来るはずだ。
―――ザクッザクッ
ふと、庭から足音が聞こえてきた。
(キシン……!?)
―――ザクッ………ザ………
だが、足音は窓の手前で途絶えてしまった。
『………?』
それから、また足音がした。 しかし、それは段々遠ざかって行く。
(キシンじゃないの?)
しかしまた足音が消え、暫くすると今度はまた此方に近付いてきた。
そしてまた窓の前で止まる。
(………???)
『キシン? キシンなんでしょう?』
すると、止まっていた足音がまた聞こえて、窓からキシンが入ってきた。
『や、やぁ………』
心なしか、ぎこちない様子だ。
『キシン………あ、あのね。 ………ごめんなさい。』
キシンに釣られてか、私もぎこちなく頭を下げた。
するとキシンが急に慌ててだした。
頭を上げてとか、謝る必要ないとか。
『そ、その………アルネちゃん、怒ってない?』
『えっ? 私が? な、なんで私が?』
面を食らった私が尋ねるとキシンの顔が見る見るうちに赤くなった。
『そ、その………昨夜の………
俺、勝手に入っちゃって………』
あぁ、そういえばあの場合で怒るのは私の方だったかも知れない………
『あ、気にしてないわ………だから、謝らないでよ。』
キシンが申し訳ないと謝ると、パタリと会話がやんでしまった。
『………』
『………』
お互い見つめあい、数秒が経過した。
(き、気まずい………)
何か話題はないだろうか………
『あ、そ、それよりさ、アルネちゃん。
俺、もう来られないかも知れない………』
『えっ………?』
急にそんな事を言われ、つい声が出てしまった。
『………ちょっと用が出来て、遠い所に行かなきゃならないんだ………』
『行っちゃうの………?』
遠い所、そこはまさか………
『夜だけの相手だったけど………俺、実は。』
『言わないで!』
私はキシンの会話を遮り、そのまま抱きついていた。
急なことに驚くキシンを離さないまま、私は言葉を続けた。
『私、キシンが好き! だから、幽霊でもいいから行かないで! もう私を一人にしないで!』
震えながら、涙ながらキシンに伝えた。
そんな私の背をキシンの手が優しく撫でる。
『も、もう一度言って。 アルネちゃん、俺が………』
『好き! 好きなの………』
キシンも何故か震えていた。 震えながら、笑顔になった。
『本当に? マジで? 本気?』
ウンウンと首を縦に振るとキシンは嬉しそうに微笑み、私を抱き締めた。
『やっっっっった!!!
アルネちゃん!!』


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