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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜金美花・下編〜-10

暫く固まった後、ダッダッダッと足音荒く窓に近付いて勢い良く窓を閉めると、また足音荒くベットに戻って毛布を頭から被った。
(ど、どの辺りから見られてたのかしら………?)
始めからか、中場からか。
どちらにしても、最後のキシンの名を唱えながらイッた所は見られただろう。
(い、いや〜〜〜〜!!)
明日からキシンとは顔を合わせられそうにない………
し、しかも好きだってこともバレちゃった………
(い、いやぁぁぁぁぁ!!!)
それから私は数時間羞恥で悶え続けた………


翌日、皆の目に写った私はこれ以上ないくらい変だった。
基本的に落ち込んでいて、時折かぁっと顔が赤くなっては急に頭をブンブン振ったり、溜め息を吐いたと思ったら、頭を抑えながら嫌〜〜っと嘆いたり。
『め、メイド長………どうしちゃったんだろ?』
『さ、さぁ………』
奇行を繰り返す私に、メイド達は心配してばかりだった。
『アルちゃん………何に悩んでるんだろ………?』
ゼロまでが心配してこちらを見ていた。 ただ、昨日までの教訓か? 十分な距離をとって。
突然私が閃いたかのように立ち上がる。 表情は明るく、解決策が出たように見えたが。
また突然絶望したように、ガクリと座りこんでしまう。
(うぅ………キシンに嫌われちゃった………)
あんなの見られては生きていけない………いっそ、死のう。
とまで考えているくらいだった。
『アルネ。』
ポンと頭に何か触れた感触がある。
そして顔を上げるとそこには紅様が心配そうな顔で私を見ていた。
『紅様………』
『なんでそんなに落ち込んでいるんだい?
私で良ければ力になるよ。』
優しい眼差しで私を見ながら、私の頭に手を乗せて撫でている。 それが妙に心地よかった。
『うぅ………紅様ぁ〜〜〜………』
私は半泣きな顔で紅様に悩みを打ち明けた。

『つまり、相手に幻滅されるような事を見られちゃったんだね?』
『はい………』
その相手と、幻滅されることの内容は曖昧にしておいた。
『ふむ………』
紅様は深く考え込んだ。
『やはり、それは相手に会って話すべきだよ、アルネ。
もう二度としないから、許してくれって。』
それはわかっているのだが………
『顔………合わせづらいです。』
『でも、このままじゃ駄目だろう? 君はこのままでも良いのかい?』
キシンが私を嫌いなまま………そんなことを想像しただけで悲しくなる。
『いやです………』
紅様はニコリと微笑むと、立ち上がり、そっと座っている私の頭を両手で包んだ。
『………私はアルネにも幸せになって欲しい。』
『紅様?』
紅様は子を慈しむように、優しく私の頭を撫でる。
そう思えば、紅様は私の親のような人でもある。
(あの時あんな関係にならなければ………)
でも、やっとちゃんとした関係になれたのかもしれない。
『紅様………』
『………でさ、アルネ。』
ふと紅様の声が変わる。
『………相手は誰なんだい?』
うっ………
なんだか紅様は、娘の恋人が気になる父親、のような顔をしている。
『ひ、秘密です………』
『私の知っている人かな?』
『えと………違います………』
じっと探るような目で見つめてくる紅様。
そんな紅様の追求をあの手この手で誤魔化しながら、やっと解放されて部屋に着いたのはもう夕方だった。


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