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デネブの館
【その他 官能小説】

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デネブの館-7

 入ってみると、かなりけばけばしいメイクをした女性が退屈そうにしていた。
 黒ずくめの魔女と思しきその姿を見て、俺は少々驚いたものの、何故か向こうの方も驚いたようでアイシャドウを塗りたくった目を見開いたまま硬直している。
 さながら目が合った相手を石化させるというゴーゴンのように見えて、俺は度肝を抜かれた。

「あ、あの、ちょっと診てもらいたいんですが」
「あ、お客さん――? あ、そう。いや、そうですか。どうも、いらっしゃいませ」

 客が来ることに驚くほど暇だったのだろうか。
 その魔女は、俺を客と確認した上でようやく挨拶をしてきた。
 挨拶のあとに、俺は魔女と魔女らしくない世間話をすることになる。
 たとえば天気の話だったり、テレビ番組の話だったり、そんなようなことだ。
 後で知ったが、これは占い師の常套手段で、世間話などを通して相手の性格を知ろうとしているのらしい。
 コールドリーディングという話術だ。
 魔女がその技術を巧く扱っていたかは微妙なところだったと思うが、俺はようやく本題に入った。

「あの、仕事運を診て欲しいのですが」
「仕事――ですか。仕事――ね」
「何か、問題でも?」
「い、いや、別に問題は無いですわ。それでは、カードを引いていただけます?」

 俺は彼女の指示通りに、カードを何枚か引いた。
 タロットカードと言うらしいが、聞いたことはあるくらいで、当然俺は何も知らない。
 引いたカードを魔女が俺の前に並べて、俺にめくるように言った。
 めくると、塔のカードが出てきた。
 もう一枚めくれという指示に従うと、太陽のカードが出てきた。

「これはどういう?」
「これは、確かにあなたは仕事上でトラブルを抱えているのね。でもあまり心配はしなくていいと思う」
「何故ですか?」
「塔のカードはあまりいい意味ではないのだけど、あなたの未来に太陽が出ているから。悪いことは長く続かない、そういう風に見えるわ。勿論、あなたの努力次第だけど」
「へぇ。それは良かった。気が滅入っていたから、少しは落ち着きましたよ」

 あながち悪くない占いの結果を聞き、俺はそれなりに満足したのだが、何故かその魔女は浮かない表情をしている。
 俺が不審に思っていると、魔女はポツリと語り出した。


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