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デネブの館
【その他 官能小説】

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デネブの館-1

 俺のさほど広くないアパートの一室に、二畳ほどを分割する妖しげな仕切りがある。
 ダンボールを無理やり立てて、そこに黒い布をペタペタ貼り付けてある、そんな仕切りだ。
 何か、子供が作った秘密基地のように見えなくもなかった。
 入り口脇には『デネブの館』などと書かれた小さな立て看板が置かれ、何故かギョロ目の黒猫のイラストも添えてある。
 少々館の作りが安っぽいのはさておき、これが室内に設置されているのはどうか。
 俺は最近、そのように思い始めている。

「戦車の逆位置……うーん、やな感じね。今日のあなたは何かしようとすることが、尽く失敗してしまうわ」

 これは、最近の俺の一日が始まる前の儀式と言っていい。 
 目の前の黒ずくめの女に、俺の運勢を占ってもらうのである。
 女はゴスロリと云うのか、あるいはそれをシンプルにした黒い服に黒いスカートを履いて、頭には魔女御用達の黒いとんがり帽子を被っている。

「一体何をしようとしているのかしら……? 恋愛の正位置……これはつまるところ、今日のあなたは女運が無いということね」

 タロット占いというらしい。俺は占いについては門外漢であった。
 かなり洋風のコスチュームのわりには、畳の上にカードを並べてはめくる光景は何か滑稽に見える。
 しかし、彼女は真剣であった。
 何せ、彼女はこれで食っている(はず)なのである。

「なぁ……アイ。今日は、俺、会社休みなんだぜ? 朝からこれ、やらないといけないのか?」
「朝にしないと、一日の方針が定まらないでしょう? あと、デネブって呼びなさい」
「もう、俺眠いんだよなぁ……寝かせてくれよ」
「だらしないわねぇ……じゃあ、待ってて。今から朝ごはん作るから。食べれば目も覚めるわ」

 アイはタロットカードを丁寧に片付けると、トテトテとキッチンに向かう。
 冷蔵庫から食材を取り出すと、手際よく調理し始めた。
 魔女の扮装のままで調理をしているのがシュールながらも、彼女の料理はかなり美味い。
 俺にとってそれは、二番目に有難いことかもしれない。
 では、一番は何かと云うと――――


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