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蜘蛛の巣
【その他 官能小説】

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蜘蛛の巣 U-1

あの日から二週間がたった。鷹はあれから私を誘ってはこない。と言うか、話そうともしないんだけど、私も特別気にしたりはしない。優は優で最近はラブホに頻繁に呼び出す始末。鷹とのことを知ってるのか知らないのかは分からないけど何にしてもヤる回数が前の倍は増えてる。
一応、これでも、鷹と優がかち合ったりしないようには気を付けてるんだよ?「家族」なんだし、アイツらは血が繋がった兄弟だし。だか、家に居る時の私は少しお疲れモード…。柄にもないことするから。
「…それ最後どうなるの?」
私はソファーに俯せに潰れたまま、食い入るようにテレビに夢中の泰に聞く。番組はバラエティーなんかじゃなく、もちろんドラマ。なんか主人公が親友とその友達のどっちからも好かれてて、困ってるって奴。
「あぁ!!気になるよなぁ!?俺的に千佳は拓を選ぶ気がするんだよぉ〜。」
エンディングを聞きながら興奮して私に語る。千佳は主人公、拓は親友の名前だ。「そう?」
私には興味がない話。
「なぁ、なぁ、百合ちんだったらどぉする?」
出た。泰のもしもシリーズ…。絶対有り得ないのにすぐ自分だったらどうする、とか聞くのよね。そんなのなってみなきゃ分かんないっつの。
「わたしィ〜?…う〜ん、、そのどっちかが好きなら選ぶだろうけど、どっちも微妙なら選ばず二人ともと仲良くする」
泰ににっこり笑って答える。
「うわぁ…百合ちん悪女…」
「ウルサイわね…一番平和的じゃない。」
「どこが平和的なんだよ」
突然、後ろのテーブルの方から鷹が口を出してきた。水を飲みに部屋から降りてきたらしい。
「あらぁ〜平和的じゃない。誰も傷つかずにお互いが好きな人と過ごせるのよ。同じ気持ちを選別するなんて酷過ぎるわよ。」
ソファーで寝返りを打ちながら鷹の方へ顔を向ける。
「…お前人を本当に好きになったことないだろ?」
珍しく私に説教じみたことを言ってくる。
「モテ男の鷹君とは違いますから。」
あまり突っ込まれたくない話題に入ってきたから、冗談でかわした。
「答えになってねぇよ」
鷹は訝しく睨み付ける。そんな顔されても怖くないし。
「ふぅん…。百合ちんって意外に保守的なんだなァ」
「…」
泰の意外な言葉に私の動きが止まる。
―保守的?まぁ自分はカワイイけどね。でも別に守ってるわけじゃない。むしろ……
鷹はじっと私の一挙一動を監視していた。その視線が私を不愉快にさせる。
ポンッ―
私は泰に枕にしていたクッションを投げ付けた。
「じゃりたれの恋愛なんかと一緒にしないでくれる?大人になったらわかるわよっ。」
笑いながらそう告げると勢いつけて立ち上がり、リビングを出る。
がたっ―
私が出たと同時に、後ろから鷹の座っていた椅子の音がした。私は階段の手前で足を止める。
「…何?」
やっぱり後ろから着いてきた鷹にとぼけた振りして尋ねる。
「俺の質問に答えろよ」
しつこく食い下がるつもりなんだ…。
「…はぁ。じゃあアンタはどうな訳?私にぐだぐだ説教出来るくらい誰かを好きになったことがあるの?」
ムカついて強い調子で鷹を攻める。
「少なくともお前みたいなふらふらした恋愛はしてない」
まっすぐ、私を見据える強い眼差し。睨んでるとは違うけど、睨んでるより怖い目。
「だからぁ…私は恋愛してないの。誰かを一番好きだとか一緒にいようだとか、思わないの。」
ついに私が耐え切れず視線をずらした。そんなに熱くなられても困るのよ…。
「…自分が欲しいものは手放しちゃいけないの。どれが一番だとか何が良いだとか選んじゃダメなのよ。」
―だってそんなことをしてるうちに失ってしまうから…。
私はポツンと零した。多分無意識。鷹は切なげな目で私を見つめ続けている。余計なことまで言って、言いたいこともなくなった私は階段に脚を架けた。鷹の出方が気になったけど、引き止めないみたいだし足を早める。
全部登りきった後、鷹が口を開いた。
「…俺や兄貴と簡単に寝る理由は何だよ?手放したくないからか?」
私は階段下へ振り向く。なんだ…そんなこと。本心で聞きたかったのはそれだったの。私は失笑した。
「言ったでしょ?私は基本的に選ばないの。だから相手がくれるものは何だってもらうわ。覚えてる?あの時鷹から誘ったのよ。だから乗っただけ。…満足した?」
私は上から見下す形で鷹を見る。あぁ、きっと今私悪魔みたいな女に見えるんだろうなぁ…。
「そう言われれば、俺との時も俺から誘ったんだっけ」
―!!
声に驚いて振り向くとそこに、優がヘラヘラ笑いながら立っていた。


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