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蜘蛛の巣
【その他 官能小説】

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蜘蛛の巣 U-5

オカザキマイ。そう、舞さん…。「全てを選別せず、尚且つ欲しいものは手放しちゃいけない」ことを教えてくれた人。別に私はあの人嫌いじゃないわ。あの人は上手くやっただけだもの。上手くパパを虜にして、上手くパパを持っていっただけ。ふらふら付いていきかけたパパを繋ぎ止めれなかった私たちが負けたのよ。
「意味わかんねぇよ…」
泣き気を帯びた鷹のくぐもった声が聞こえた。
「岡崎とかいう奴になりゃいいってもんじゃねぇだろ!」
明らかに怒りが表れている。
「…復讐を遂げるまでは他の男を蛹の餌としか思ってない女だってはっきり言われたよ。だから餌になるな、百合葉から離れろって。実の親にああ言わせるところがすげぇよなぁ…。」
「そんなんで良いのかよ!?結局俺たちが逃げても、百合葉はまた別の男と寝るだろうが!!」
鷹の声が荒げる。やっぱり優とは対照的な反応。
「家族だからだよ。史恵チャンだってやっと掴んだ幸せなんだ。関係ない俺たちまで前の夫とのゴタゴタに巻き込まれちゃ溜まったもんじゃねぇだろうが。」
鷹の情熱を冷静に諫める優。
「くそっ…結局、踏切りつけれなくて子供みたいなコトして一番迷惑かけてんのコイツじゃねぇかよ。そうやって親父さん取り戻したって何が幸せなんだよ!!」
鷹の声の指すベクトルは私だ。
言いたいことは言わせた。どうゆう経緯で今日こんなことにならざる得なかったのかも納得出来た。
あとは…、私か。バレてるんじゃ仕方ないものね。

「私の幸せをアンタが決めないで。」
私は上体を起こし、二人に向き合った。
「その話の大筋は合ってるわ。確かに私は"岡崎舞"と同じ様に生きる方を選んだ。だからってアンタ達になんか関係ある?いいじゃない。狙った女と寝れたんだし。アンタ達にメリットがあるように、私にもメリットがあって当然じゃない?」
ただ二人の目を見据えて、静かにそう言った。
「まぁね。別にそんな事どうこう言う気はないけど、それを知った上でも俺はお前と離れたくない。」
優が吸い掛けの煙草をもみ消した。
「…ママの幸せを壊す気はないわ。ママにだって幸せになる権利があるし。だけど…これからもアンタ達が求めるなら私は"応じる"。だったら離れて暮らすしかないじゃない。」
「っ‥だから、なんでその女と同じ生き方選ぶんだよ!?お前はお前で取り返しゃイイだろ!?」
鷹が身を乗り出してまで私に熱く諭す。
知らない癖に、なぁんにも。岡崎舞がどんな女性で、私に何をしてくれたのか、知らない癖に。
彼女はずっと私に教えてくれていた…。まだパパと一緒に行ってしまう前にも。
―『百合葉ちゃん。大事なモノは捕まえてなくちゃダメよ。じゃなきゃ、持っていかれても文句言えないでしょ?世の中には、来るものを拒まず受け入れる人もいるんだから‥ね?』
確かに一般的に見たら百パーセント向こうが悪いのかもしれない。だけど私は、あの人とのゲームに負けたの。私が舞さんのようになりたいと言った時から始まった"幸せの獲物獲りゲーム"に、負けたの。
乗った船だもん、次は私の番があってもイイでしょ?折角このゲームの攻略法が解ったんだから。「自分は決して選ばず、全て受け入れ、そして欲しいものだけは手放さない」っていう簡単な攻略法。
「私は、絶対負けたくないの。私にも幸せになる権利があるんだから、邪魔しないで。」
私は二人を睨み付けた。
「俺たちの幸せは?」
優は何も動じず尋ねる。
―…。
「知らないわ。」
他人の幸せなんか考えたら自分の幸せが逃げていくの。
直していた服をきれいに整え終わった私は優のベットから立ち上がった。
「離れたほうがイイよ。離れて頭冷やして。私は絶対にパパを諦めれないから。」

―そう、誰が何と言おうと…。


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