その（３）-5
九月に入り、何となく胃がもたれるような気分の重さを感じる日々が続いていた。まだ残暑の厳しい毎日で、夏の疲れかと思っていた。
どうやらこれなのかと原因に思い当たった時、言いようのない複雑な感情に捉われて戸惑いに包まれた。
「おとうさん……」
カナは山野をそう呼ぶようになっていた。
きっかけは八月の末に旅行したことである。
旅行ときいてカナははしゃぐほど喜んだ。旅行の記憶は幼い頃海水浴に行って伊豆の民宿に泊まっただけだと昂奮気味に話した。
「その時初めて活きた伊勢エビを食べた」
「それじゃ伊勢エビを食べよう」
さっそく房総の宿を予約した。
「おじさん、いっぱいＨしようね」
浮かれたのか、山野を喜ばせようとしたものか、いずれにしてもそう言われて高ぶらないわけはない。
「カナをいっぱい愛しちゃう」
ふだん実行しない淫らな行為を想像して昂奮を新たにしたものだ。
当日、カナに言い含めた。
『おじさん』ではおかしいから親子ということにしようと言ったのである。
「親子？」
「そう。俺はお父さんで、カナは娘」
「おじさんじゃだめなの？」
「だっておじさんと旅行って、ふつうしないよ」
「そうかな」
「そうだよ。だから、お父さん」
人と接する機会はあまりないとは思ったが、宿の従業員に勘ぐられても困るので念のため用心した。
カナはわざと『お父さん』を連発して笑いこけた。旅の開放感なのか、冗談を言うカナを初めて見た。
ホテルでは自分を捨ててカナと戯れた。二人とも全裸。山野は天を向いたペニスを跳ね上げながらまずカナの写真を撮った。新しい記録である。
前後左右、微笑み、澄まし顔。
「笑ってごらん」と言うと、わざとにらめっこの顔をして頬を膨らませてみせた。楽しくて昂奮した。
フェラチオをさせた時のうっとり目を閉じた表情には思わずぞくっとした。立ち上がり、カナに咥えさせて上から撮ったものだ。濡れた唇に呑み込まれたペニス。やや上気した顔でときおり薄目をあけて彼を見上げる。目元に色香が漂っていた。この時ばかりは少女の面影はなかった。
「カナちゃん、猫になってみて」
カメラを置いて抱きしめて言うと、カナはすぐに乗ってきた。
「ニャーン」
山野に絡みついて彼の頬をぺろっと舐めた。
「ニャンニャン」
うつ伏せにしてくすぐる。カナはけらけら笑って体をくねらせた。ごろりと仰向けになると手足を猫に真似てじゃれついてきた。
オッパイを突っつき、尻をぺたんと叩き、その度に『カナ猫』は嬉しそうに、
「ニャンニャン」
山野に飛びつく格好をみせた。
仕返しとばかりにカナの手がペニスを叩く。
「カナ、今度はワンちゃん」
起き上がって四つん這いに早変わりした。
「ワンワン」
歩き回って腰をぷりぷりとさせたのは尻尾を振ったつもりである。うろうろすると愛らしい乳房がぷるぷる揺れる。
「クンクン」
胡坐をかいている山野の股間に顔を寄せて、
「ソーセージかな。食べちゃおう」
ぱくっと亀頭を咥えた。
「お預けだよ」
咥えたままいやいやをしていたずらっぽく目が笑った。
その夜、山野がいつも以上に燃えたのは言うまでもない。
「カナ、カナ……」
うわ言のように呼び掛けながら愛撫し続けた。カナの尽くを舐めた。
その濃密な淫戯にカナが応えた。見たことのない反応が起こった。
「あ！あ！……おじさん」
（感じている）
体の微妙な手ごたえでわかる。微かな痙攣が断続的に走る。気がつくと舐めていた陰核が舌先にコリっと当たった。見るとピンクの小さな顔が覗いている。さらに皮を捲って吸いつくとカナは脚を突っ張って引き攣った声を発した。
「ヒッ、ヒッ」
小刻みな痙攣に腹部がひくひくと動く。
「ああっ、変、変になる！おじさん！」
新たな液が舌に触れるのがはっきりわかった。
（きた！やっときたんだ！）
女の扉が開かれるんだ。女の歓びに目覚めるんだ。
少女から女へ。
（俺が女にするんだ！）
その感動は急激に射精を煽った。
もはや猶予はならない。起き上がって脚を開き、一気にのしかかった。
「いい！」
顎を上げてのけ反るカナを見るのは初めてのことだ。それだけに妖艶さは新鮮だ。
（カナ！）
カナは波打つように上へ上へと逃げていく。逃げながら膣はペニスを離さない。
（たまらない）
煽られて発射に向けて進むしかない。山野は折り重なって突き立てた。
「うう！」
その直後、カナの膣が収縮した。同時に胸を迫り上げ、顔を真っ赤にして突っ張った。
「オトウサン！」
しがみついて叫んだ。伸びていた脚が山野に絡んで股間をぶつけてくる。
「カナ……」
夥しい精液が噴出を続けた。
（カナは俺の女になった……）
意識が薄れていく中で歓喜の炎を見た。