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透明な滴の物語
【同性愛♀ 官能小説】

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薄暗い部屋の中で-1

佐和子と聡美は、二人きりで隠れるようにセミナーハウス内にある救護室に避難した。
明かりが廊下に漏れることはなかったが、念のため部屋の明かりはスタンドだけ灯した。
「聡美さん、びっくりさせてごめんなさいね。でもね、あの状態でいるのは良くないわ。幸い、あれを聞いたのは私だけみたいだから良かったけどね」
二人は救護室のベッドの上で隣合わせに座っていた。
「先生は、ずっと聞いていたんですか?」
ここは聡美をもっとリラックスさせなければならない。
打ち解けてフレンドリーな雰囲気を出したい場面だった。
「佐和子で良いわよ。佐和子さんとでも呼んでね。二人きりなんだから。先生なんて止めましょ?トイレには、たまたま入ったのよ。そしたら聡美さんの声が聞こえてきたから」
聡美と特定するまで「捜査」したことは伏せておいた。
「かなり苦しそうだったけど。…ずいぶん出ていないの?」
聡美はうつむいたままで佐和子に顔を向けようとしない。
聡美のプライドが白状することを拒み続けていた。
しかし、もはや白状するしかない状況であることも分かっていた。
「はい。…研修に来る前からなんです。研修に来る前からしばらく出てなくて。だから、もう1週間になるかもしれないです…」
小さな声で聡美が告白した。
佐和子は隣から聡美のブラウスの肩に手をかけ、そっと撫でた。
「そうだったの…。よく話してくれたわね。知らず知らずの間に緊張してたんだと思う。便秘になっちゃうのも仕方ないわよ。いいのよ。仕方のないことだから」
見た目にも優しい佐和子のその言葉に思わず心が揺れそうになったが、その優しさになびかないように堪えた。
ここで心を許してしまうと自分の中で何かが崩れ去ってしまうような予感がしたからだ。

佐和子は救護室の机上にある救急箱の中を漁った。
そして中から1つの薬を取り出した。
「聡美さん、これ何か分かる?」
佐和子の手に握られた箱に目をやると、聡美は頭から血が引いていくような衝撃と興奮を覚えた。
市販の浣腸の箱だった。
しかし、その名称を口に出すことには抵抗を覚えた。
日頃は伏せておくべき秘匿の薬の名前であり、それを使わなければならないことは自分の敗北を意味するように思えたからである。
「…いやです」
聡美はそう言うと、薬の箱から目をそらした。
佐和子には予想済みの反応だった。
「うん。わかるわ。でもね、もう、どうこう言っている場合じゃないと思うの。聡美さんのお腹って、かなり大変なことになっちゃっていると思うの」
聡美が思いついたように反論した。
「先生、お薬ください。飲み薬の。それで大丈夫だと思います。わたし、そのお薬だけはイヤです」
予想以上に浣腸に対する反発感を持っているようだ。
「聡美さん。便秘薬じゃ、いつ効いてくるか分からないのよ。必ず明日の朝に、計ったように効くといえる?講義中に効きだすかもしれないのよ。お腹ゴロゴロ言わして、皆の前で手を上げて、中座してお手洗い行く?あなたが長いことお手洗いから帰ってこなかったら、みんな…」
聡美のはっきりした顔立ちの美しい顔が歪んだ。
悔しいが言われていることは尤もである。
今のうちに出しておかないと、明日皆の前で醜態を晒すことにもなりかねない。
下腹部の重苦しさが現実を突きつけた。



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