恭介とマドカ-12
放心したまま痙攣を繰り返すマドカの膣内からコンドーム付のペニスを引き抜いて、恭介は独りでバスルームへと向かった。ザーメンまみれのゴムを引き剥がし、熱めのシャワーを浴びる。汗と愛液を洗い流すのと共に、頭の中の靄が晴れていくのを感じた。待ちわびた恵みの雨を受ける農夫のように、恍惚の表情を浮かべ頭上から降り注ぐ熱湯を見上げる。
シャワーの栓を閉じ、タオルを使って部屋へと戻った。気をやったのか、マドカはだらしなく股を開いたままの姿勢で目を閉じている。
「それにしても…」脱ぎ散らかした服からタバコを一本取り出して、マドカの肢体を眺めみる。呼吸に合わせて上下する胸の豊かな膨らみと、無毛の恥丘。地味な外見を剥いて現れたのは、恭介の激しい性欲をも貪欲に吸収する牝体だったとは。
「これは、いい玩具を手に入れたかもしれないな」
恭介はニタリと笑って、タバコを灰皿に押し付けた。二つ目のコンドームをペニスに装着し、ベッドによじ登る。ペチペチと平手で軽くマドカの横顔を叩き、朦朧とした目が半開きになったのを確認すると、恭介は再び性器をマドカの秘裂へ深々と挿入した。
「ふぇ?え、あ?あ、あ、ああーっ!」
突き上げられる快楽に、徐々に意識を取り戻したマドカが喘ぎ声を上げ始める。
「目ぇ覚めたか」
マドカの腰を抱え上げ、正常位の姿勢で深い所へ抽送を繰り返しながら恭介が問うた。涙目で恭介を見上げたマドカがコクコクと首を振る。
「それじゃ、起きろ」
恭介の腕がマドカの両脇を抱え上げ、対面座位の体勢を取らせた。
「今度はお前が動くんだ。解ったな」
額に額を押し付け、恭介が命令する。無論、マドカに拒否する権利などない。
言われるままゆるゆると、四肢を絡め腰を動かそうと試みるが、思うように力が入らない。性器と性器とをわずかに擦りあわせるだけのもどかしい動きに恭介の手が動いた。
パアン、と勢い良く振り下ろされた平手がマドカの尻を打ち付ける。
「ひぃっ!」
2度、3度と繰り返し恭介の手が振り下ろされ、それから逃れようとするマドカのあがきが、ピストン運動の快感に変換され恭介のペニスへともたらされた。
「ちゃんと動くんだ、いいね?」
両手でマドカの顔を挟んで、恭介が命じる。先ほどまでとは違って口調は優しげだが、目元の険しさは変わらない。
ゆっくりと、恭介がベッドに横たわる。騎乗位の姿勢を取らせ、マドカの恭順な姿勢を試すかように、冷たい目で微笑んで見せた。
「出来るよね?マドカ」
「はい…。大丈夫…です」
恭介の胸に両手をついて、おずおずと腰を振り始める。
マドカのぎこちない動きに、恭介が少し不満げな顔を作ると、それを察したのか、マドカの腰の動きが早められた。
「んっ、あっ…!これで…いいっ、いい…、ですか?」
精一杯の早さで腰を振るマドカに「まだだ」と返答する代わりに恭介はマドカの腰を掴ん2、3度激しく上下に揺さぶった。
恭介はニタリ、と笑って「これを繰り返せ」と目で告げる。
「ああっ!ダメ、激し…いぃっ!」
恭介に強請られるまま、一心不乱に上半身を振る。「動かなければならない」という強迫観念と、押し寄せる快楽とがマドカの精神をかき乱す。パニック状態に陥り、半開きになった口からは涎がだらしなく垂れ落ちるが、そんなことを気に掛ける余裕など、今のマドカからはとうに失われていた。
「もう…、ダ…メです…。イク、イっちゃう!」
叫ぶマドカの躯から力が抜ける。そのタイミングを待ちかまえていたかのように、恭介の上半身がベッドから跳ね上がり、その勢いを殺さぬまま、マドカの背中を柔らかいベッドの上へと押しつけた。
正常位の姿勢を取らせて、恭介が激しく腰を打ち付け始める。己のフィニッシュも近い。マドカが完全に気をやってしまわぬ前に、最後の命令を下した。
「舌を出せ」
殆ど崩れ落ちた理性の、最後のひとかけらで恭介の言葉を理解した。盲目的にただ従って、唇から舌を突き出す。
「イくぞ、オラっ!」
果てる寸前で膣からペニスを引き抜きゴムをはぎ取ると、半開きになったマドカの口膣に乱暴に押し込んだ。
「んぶっ!むーっ!」
呼吸を奪われた苦しさと、口内にそそぎ込まれた異臭にマドカの額が歪む。二度目とは思えぬ量の恭介の白いたぎりが、マドカの喉奥へと流し込まれた。
「ぶふっ!ぐっ!げほっ!」
マドカの喉が、ゴボゴボと苦悶の音を奏でる。恭介は自分でペニスを根本からしごき、最後の一滴まで流し込むと、ようやくマドカの唇を解放した。
「んぷっ、かはっ!」
潮苦いザーメンを溜めたままの口を開け、酸素を貪る。吐き出して、呼吸を楽にしようとするマドカの動きを恭介が封じた。
「飲め」
マドカの口の端からこぼれ出た雫を、指で拭いながら恭介が命じた。集めた精液をマドカの唇に押し込んで、同じ命令を繰り返す。
「飲むんだよ。出来るだろ?」
恭介の、質問の形を取った強請にマドカが首を縦に振る。ゴクリ、と喉を鳴らして、口の中で粘つく体液をようやく飲み下した。
「飲み…ました…」
「嫌か?俺の精液を飲むのは」
やらせておきながら、他人事のように恭介が聞く。
「いえ…。大丈夫…、です」
「いい娘だな…マドカは」
模範解答を返したマドカの頭を恭介が軽く撫でると、マドカの表情がふっと和らぐ。それに釣られるように恭介も嘲笑を浮かべた。
ーーオンナってのは、どうしてこうも単純なのかねーー
褒められて、嬉しげに照れるマドカの手を引き、恭介はバスルームへと向かった。