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『清子と、赤い糸』
【幼馴染 官能小説】

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『清子と、赤い糸』-25


「初日の今夜は、超定番の“カレーライス”でいくでぇ。明日の朝は、いっとう上手くなっとるから、バッチリやろ!」
「………」
 嬉しそうにキッチンで腕をふるう清子の様子を、岡崎の熱視線が追いかけていることに、彼女は気がついていない。
「二日目の今夜は、みんな大好き“鶏のから揚げ”やでぇ。明日の朝は、この自家製タルタルソースをかけて、パンにはさんで食べてや!」
「………」
 夕飯だけでなく、次の日の朝も岡崎がすぐに食べられるように、清子はきちんと考えた献立を用意していた。母子家庭で育っただけに、清子の料理は完璧で、岡崎はわずか二日でその胃袋を完全に掌握されていた。
「三日目の…」
「清子」
「!?」
 そして、“今夜は、明日も美味しい豚汁やでぇ”と言い切る前に、それは起こった。
「ま、まーちゃん、ど、どないしたん?」
 キッチンの前に立ち、豚汁の材料を並べていた清子の背中に、岡崎が抱きついてきたのだ。
「ま、まーちゃん、セ、セクハラは、い、いかんよっ……」
「わかってる……」
「わ、わかっとらんよっ。手、手が、ボ、ボインのトコに、あたっとるしっ……」
 顔だけでなく、体中を熱くしながら、それでも清子は、岡崎の手を振りほどけなかった。
「すまん、その……なんとか、我慢してたんだが……」
 “もう無理だ”と、岡崎はそう言った。
「ま、まーちゃん……んっ……あんっ……」
 自然と耳に息がかかる体勢である。初めて受けたその甘い刺激に、清子は、今までにない“オンナの声”を挙げてしまい、自分が出した声だとは思えないその嬌声に、自ら身体を震わせていた。
「清子が、その……欲しくなってしまった……」
「そ、そうなん? あっ……んっ……」
 胸の辺りを押さえている手が、明らかにそれを揉む動きをしている。セーラー服の、更にエプロンの上からだというのに、岡崎の手の熱さが、はっきりと分かる。
「清子……」
「やっ、み、耳の裏、くすぐったぃ……あっ、あんっ……!」
 唇で首筋から耳の辺りまでを、何度もなぞられた。背筋を這うように昇ってくる、言いようのないくすぐったさと、痺れるような甘い感覚が、同時に清子の身体を走り、喉からエロスにまみれた高い声が挙がってしまった。
「あ、あかんって……せめて、ゴハン、終わってから、な……」
「悪い、無理だ」
「って、んっ、あ、んんっ、ま、まーちゃぁん……!」
 まだあどけない少年と少女だが、キッチンで非常にエロティックな交わりをしている。“台所の情事”というのは、その字面だけで、なんともエロス極まりない雰囲気を醸し出す。
「ご、後生やから、その、するなら、き、きちんとして……」
 胸を撫で回され、首筋から耳の裏にかけて口づけを受けて、それでも清子は、流されまいと抗っている。やっぱり、大事な“初めて”は、ちゃんとした“場所”で捧げたいと思う、清子の“乙女心”である。
「……きちんとなら、いいのか?」
「……きちんとなら、ええ、よ…」
「……わかった」
「わぁっ……!?」
 やにわ、岡崎の腕の拘束が解かれたかと思うと、どういう風にしたのか、分からないぐらい、瞬時に全身を抱え挙げられた。
(わ、わ、こ、これって、“あれ”やんけ!)
 いわゆる、“お姫様抱っこ”である。身長は確かに抜かれたが、まだそれほどの差はなく、しかし、岡崎が男子である事を、自分の身体をしっかりと抱え挙げるその力強い腕によって、清子は今更ながらに知らされた。
「俺の部屋で、いいな」
「……ええよ」
 清子は、岡崎の腕の中で、どうにもならないくらいに顔を茹で上がらせている。乙女心を非常に満足させる“お姫様抱っこ”にて、リビングを出て、階段を昇り、岡崎の部屋に運ばれている間、清子は“夢心地”であった。


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