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『清子と、赤い糸』
【幼馴染 官能小説】

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『清子と、赤い糸』-16

『……

「どりゃあ!」
「ナイスボール!」
 “一軍”の専用練習場で、フリー打撃に登板している清子は、球威のあるその直球を内外角に投げわけて、打席に迎えたレギュラー組に相対していた。
 清子が“一軍”のチームに混じって練習が出来るようになってから、半年が過ぎていた。当時、小学六年生だった清子も岡崎も、今春から中学生となり、セーラー服に学生服を着るようになっていた。
「短いイニングなら、今んとこはまだ、清子がダントツやな」
 小学校時代、“二軍”でもずっとそれを受けていた捕手の小池だから、他にもミットに受けている控え投手との球威の違いは、よくわかっているようだった。ちなみに彼は今、“一軍”の正捕手だけでなく、クリーンアップを打つ中心選手に成長していた。地道な努力を惜しまず、チームプレーに徹するその姿勢は、チームの誰からも認められ、頼られている。
「よし、清子、交代や!」
「はい、監督!」
 打者一巡したところで、清子はマウンドを別の投手に譲り、帽子を脱いで、赤茶けた髪を風になびかせながら、ベンチに歩を進めた。
「はい、キヨちゃん」
「おおきに、サヨさん」
「タオル、使ってや」
「あんがと、よっちゃん」
 両サイドから、ドリンクとタオルが同時に渡される。赤と青のジャージをそれぞれ身に包んで、甲斐甲斐しくベンチを行ったり来たりしている二人のマネージャーは、清子の目から見ても、どちらとも“美少女”だと思う。小学6年生当時からそういわれていたのだが、中学生なったことで尚更、それは強く感じられるようになった。
(Wマドンナかぁ……)
 さすがに“トリプル”にはならんよな、と、自分の姿形を見て、清子は埒もない考えに浸った自分を、自嘲しつつドリンクに口をつけていた。
「? 岡崎クン、どないした?」
 ふと、赤色のジャージを着ている、髪をポニーテールに結わえた沙代が、ベンチに寄ってきた岡崎に声をかけていた。彼は今、フリー打撃の二巡目を終えたばかりであった。
「ちょっと、マメが潰れたんです」
「ほんなら、すぐ、テーピング用意するわ」
 救急箱を取り出して、手際よく必要なものを準備する沙代。彼女は、諸事においててきぱきとした動きを見せる、まさに“マネージャーの鑑”というべき、才媛であった。
「………」
 そんな沙代に、テーピングを改めて巻かれている岡崎の様子を、横目で清子は眺めている。何となく、“お似合いのカップル”に見えてしまって、それが、清子の胸にちくりと刺すあの“痛み”を思い出させた。
「? キヨちゃん、どないした?」
 青色のジャージを着ている、背の小さなボブカットの少女が、そんな清子に声をかけていた。彼女はアイシングの用意をしていて、ピッチングを終えたばかりの清子にそれを渡そうと、用意をしていたのだ。
「な、なんでもあらへんよ。ごめんな、よっちゃん」
 “よっちゃん”とチームの中で呼ばれて親しまれている彼女・頼子(よりこ)は、明朗快活な沙代とは真逆のおおらかな雰囲気を持っていて、“癒し”をチームに運んでいる。“二軍”の星野監督の細君・晴子に良く似た少女であった。
「………」
 そんな頼子の手ほどきで、アイシングを始めた清子は、ほんわかした彼女に、こんなふうにいつも優しくされたら、世の男どもはあっという間に“イチコロ”やろうなと、またしても埒もない考えに浸る。
(ウチのチームが強いんのも、美人で、しっかりもんの二人がおるからなんやろなぁ……)
 “マドンナ”クラスの女子マネージャーが、二人もいるのだから、その眼差しを受ける中で野球をしている面々が、発奮するのも当然だと清子は思った。実際、自分もそうなのだから…。
(ウチには……できへんなぁ……)
 そう思っている清子だが、母子家庭ということもあり、料理を始めとする家事全般は得意としている。特に料理は、看護師をしている母親に弁当を作っているくらいで、台所を任されているという意味でも、中学1年生になったばかりではあるが、相当の腕前だ。
 それでも、家事とマネージャーの仕事とは、全く違うものがあることもわかっていて、まめまめしくそしてかいがいしく動き回る、沙代と頼子の二人には、感心するばかりだった。
 やがて今日の練習が終わり、清子は練習場の脇にあるロッカールームで汗に塗れた下着を脱ぎ、新しいものに穿き替えていた。ロッカールームは共用なので、チームの中で唯一の女子選手である清子は、同僚たちの使用が終わってから、鍵を閉めさせてもらって、着替えをするようにしていた。小学6年生の頃は、さして気にもしていなかったが、やはり、わずか1年の差とは言え、中学生にもなると女としての恥じらいも出てくるというものだ。


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