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少しずつ
【青春 恋愛小説】

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少しずつ-2

それから、キャンパスを歩く度に彼をどこか探している。
見つけると不思議とフォーカスが合ってしまう。
まだ始まったばかりで、あいつの名前だって知らないのに。
目で追ってしまう自分を認めたくない自分がどこかにいて、自
問自答。
−私って、惚れっぽいのかな?
−それとも、経験がなさすぎて、ちょっとよさそうだから好き
になってみました、ってこと?
あぁ、やだやだ。雛鳥が最初に見たものを母親だって思ってし
まうアレみたいじゃない。

たくさんの男友達と肩組んだり、あいつなんだか楽しそうだな
ー。
あ、目が合った。
でも、無視された。
ちぇ。
ちょっとだけ、胸が痛い。


2.
気がつけば5月。大学生活も慣れ、友達もできた。全員女なの
がちょっと残念だけど。
共学なのに女子高みたいで不本意だ、って飲み会でぶちまけた
ら、みんな「私も同感」だって。
いいヤツら。


さてと、サークルでも決めよう。
勧誘は一段落して、これから新歓コンパが盛んになってくる。
結局、学部の知り合いに誘われてサッカーサークルのマネージ
ャーになることに。面倒だったら、そのとき考えようー。


ていうか、なんで新歓コンパにあいつがいるの?

「おぅ、中川。久しぶりだな。」

「久しぶり」

ドキドキするじゃないの。

「ここで男探そうとか思ってんのか」

「違いますー。それはそれ、これはこれ」

うわ、また絡んできたよー。

「まぁ、いいわ。俺サッカーすげぇすきでさ。改めてよろしく
な、マネージャーさん」

「サッカー好きなんだね。」

ちょっとかわいい。スポーツ頑張る人っていいよね。

「俺サッカー少年だったもん。国立目指して毎日…。あ、そう
いえばお前見かけたぞ、この前。」

「え?」

「目ぇ合ったじゃん。」

なんで、なんで、そんなこと自分からふってくるのよ。胸の奥に涙の塊ができたみたい。

「無視したじゃない。やっぱりやなやつなんだなって思ったよ。」

「ほー、一瞬はいいヤツだったこともあったんだ。光栄光栄。お前キャンパスの中で結構感じ悪いだろ。男が声かけてもつれないって評判らしいぞ。」


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