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少しずつ
【青春 恋愛小説】

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少しずつ-1

1.
入学して間もない私はキャンパスをうろうろしながら、大学生
になった喜びをかみしめていた。
せっかく大学生になったんだし、いろいろやりたかったことを
しなくちゃ。
バイト、合コン、買い物に、サークル入って、飲み会やって…

でもやっぱり一番は…。


今日はお化粧もしっかり。服もちゃんとしてるよね、よしよし

ガラスのドアで身だしなみチェック。
と!
ガラスのドアに映っているのは自分だけ…ではなく。私を見て
くすくす笑う男がいた。

「がんばってんなー。今日は合コンか?」

ぎゃー!やめてくれ。なんなのこいつ。

「ちがうよ!」

「男ほしいんだろ」

「そりゃ、ずっと受験勉強ばっかりだったから恋愛はしたいよ
。でも、今のは違うから!」

むきになる私。えーえー、短気ですからね。
やたらと絡むこいつは…、結構かっこいいかも。
背が高くて、髪は真っ黒でちょっとぼさぼさっぽいけど、古着
のTシャツとジーンズがよく似合ってる。目が大きくて、鼻が
高い。笑った顔がいたずらっ子みたい。あ、肩幅がしっかりし
て、手も足も結構長い…。
は!
やばいやばい。つい観察してしまった。
まぁ、そこそこもてるんだろうし、自分でももてることをわか
ってるタイプだな。私には関係がない人種、ってことか。
小学生だって男女交際をするこのご時勢にもかかわらず、私は
その手の話に疎くて、キャンパスで声をかけられてもうまく話
せない。嬉しいって思うことすら恥ずかしくてたまらない。

「お前も新入生か。学部何?」

「薬学部」

「お前頭いいんだな、俺文学部。また、キャンパスで会うよな
。よろしく。」

なんだよ、急に普通の話するなよ。感じのいいヤツみたいじゃ
ないか。

「こちらこそよろしく」

「お前の名前、教えろよ」

「中川ゆかり」

「彼氏見つかるといいな、中川。じゃあな。」


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