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少しずつ
【青春 恋愛小説】

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少しずつ-10

「今家でテレビ見てたよ」
とだけ返す。コータのまねをして私も極力簡潔に。

「今からいく」

何ですと!来てもらうんだったら、もう少し部屋の中をきれい
にしたい。女として最後の見栄を張らせて。時間をください。

「すぐは無理。今汚いから。」

「つうか、外にいるから出てきて」

はい?こういうの、少女マンガで見たことあるぞ。
え、うそ…
心臓が飛び跳ねているのが見えるようだ。
格好も気にせず、外に飛び出す。

「よう。」

「うん。」

「…」

「何?」

「…」

「…」

「お茶買って」

やだ、たばこくさい。
緊張してバカみたい。マージャンついでに遊びに来ただけか。

「わかった。酔ったままうろうろすると危ないから、お茶飲ん
だら帰りなよ」

お茶を自販機で買って、部屋に戻ろうとする。

「帰るなよ。いい加減気付けよ」

何を?
とりあえずコータの隣に立ってみる。

「…」

「俺、けっこう臆病みたい」

「ずっと、お前を見てた」

私のほうが、ずっと見てたよ。
臆病なのは私のほう。コータが言ってくれてもまだ口にするの
が怖いんだ。
ふと、空を見た。
月がきれい。

「中川がすきなんだ」

コータ、嬉しいよ。
でも、どうやって伝えたらいいんだろう。
声が出せない。のどがカラカラに渇く。
もう一度、空を見上げる。
月が教えてくれるわけなんてないんだけど。
そうなんだけど、月が背中を押してくれた気がした。
あぁ、そうか。
私はそっとコータの頬に触れる。
コータの目が大きくなる。
吸い込まれそうな目。いたずらっ子みたいだなんて思ったけど
、今はなんて切ない目。
私はコータに吸い込まれるように、そっと口付けた。


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