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冥界の遁走曲
【ファンタジー その他小説】

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冥界の遁走曲〜第一章(後編)〜-13

自然と体が硬直してきた。
「四神は俺が得た全てのものを奪ったのだ!!」
そしてアキレスは闘夜に自分の過去を話した。
そしてその過去は闘夜の過去をもリフレインさせた。



いつもと変わらない日常をアキレスは過ごしていた。
自分は変わった。
四神様のおかげで。
アキレスはこの時、四神を心の底から崇拝していた。
最初は死神というのが何の事かも分からなかった。
だから最初に四神を見たとき、不信感が募った。
だが、四神様の言った台詞とその存在感は恐ろしいくらいに絶対的で、自分は四神様を信じた。
そしてそれは正しかった。
自分の人生は180度変換した。
今までは自分を守るために生きてきた。
だが、今の自分には守るべき他人ができ、他人を守ることができる力も持っている。
それが素晴らしい事なのだと、アキレスは実感している。
アキレスはいつもの通りバイクで家に帰宅しようとしていた。
今日の晩ご飯は何かな、とかそんな事を考えていたのかもしれないが、アキレスは覚えていない。
何故なら、その後に忘れられない惨劇が待っていたのだから。
アキレスは町から少し離れた所に建ててある自分の家に帰る。
バイクを留め、ドアを開ける。
…おかしいな。
いつもなら自分の妻、シャルティーナが玄関の前で迎えてくれる。
バイクの音で自分の帰宅を感知するのだ。
だが、今日はその気配もない。
…出かけているのか?
アキレスが不思議に思いつつリビングへの扉を開けた。
そこにはアキレスにとって信じがたい世界があった。
机が端っこにどけられ、妻と息子はキッチンの前にいた。
自分の妻、息子は縄で拘束され、口には猿轡、目には布が巻かれ、何もできない状態にさせられていた。
そしてそれを囲む兵士達がいた。
顔以外の部分を白い甲冑で覆い、甲冑の左胸部分には虎の紋章が刻まれている。
アキレスはこの達を知っていた。
…四神様の近衛兵!?
彼らは四神を守るために組織されている兵だ。
アキレスが四神の元に尋ねに行くときには毎回見ている。
彼らは四神の身辺警護をしている。
と言うことは、
「アキレス、ようやく来たか」
四神 白虎がここにいると言うことだ。
「四神…様」
アキレスは一人状況が分からずに呆然としている。
「これから君にショーを見せよう」
そう言って四神は手を挙げた。
それは、アキレスの得たものを奪う合図。
近衛兵が、発砲許可を受けた合図。
近衛兵はサッと銃を構えて引き金を弾いた。
弾は全て自分の愛する妻と息子に命中する。
その時、アキレスが出来たことは微かに見えた妻と息子の顔から苦悶の表情を浮かべているのを見ることだけだった。
妻と息子が消えて初めてアキレスは動いた。
「ああああああああああ!!」
アキレスの咆吼。
向かう先は妻と息子のいた所。
今はロープと猿轡と布と、血と銃弾しか残っていない場所。
布には透明な水がついていたが、それは血によって瞬く間に消されていった。
「アキレス、今までの生活は楽しかったか?」
アキレスは全身を震えさせながら話を聞いている。
「私は今人生の中で一番楽しい時と遭遇しているよ。
人の人生を幸福から絶望へと貶める事が出来たのだから」
妖しげな笑いを含め、
「死神という職があればこそできる事だ。
素晴らしいとは思わないかね?
死神は人をも弄ぶの事のできる職だ
私はこの仕事を持てて誇りに思っているよ」
四神はゆっくりと手を挙げようとする。


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