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惚れ薬
【その他 官能小説】

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人妻液垂れ(1)-2

 まず安田に皿を渡したところで奥さんが戻ってきた。ここで流れが変わってしまった。挨拶やら病状の説明が続き、気が気ではない。というのは、母親が加わったので沙織が新たにケーキを取り出し、さらに俺の分も並べたからだ。いまさら手を出すことも出来ず、タイミングを失った。後は薬入りのケーキが沙織に当たることを祈るしかない。俺は自分の分を確保して行方を見守った。
(あ…)
沙織が手にした皿が奥さんに渡った。
「頂こうよ」
「そうね。磯貝さんごちそうになります」
安田の言葉に三人のフォークが動き始めた。
(万事休す……)
思いかけて、新たなうねりが俺を押し上げていた。なぜか…。
唇についた生クリームをぺろりと舐めた奥さんの舌。それを見たとたん、熟した果肉を連想したのである。理屈ではない。そして果肉は女陰へと繫っていった。
 よく見れば熟れに熟れている。沙織の目映さばかりに目を奪われて気付かなかったということか。……
(四十半ばだろうか…)
俺はまだ年上の女を知らない。そのことが自らを煽った。
(奈々枝といったっけ…)
齢の割にはスタイルは悪くない。適度な贅肉もまた色気となり味わいにもなる。改めて見ると安田にはもったいない容姿である。化粧が地味なので目立たないが顔立ちも整っている。沙織が母親似なのは明らかだ。
(沙織はまたの機会に考えよう…)
塾の件が記憶にあるのだから蒸し返す手もある。

 標的を切り替えると気持ちが落ち着いて、うわべだけの談笑に加わりながら奈々枝に目を注いだ。
(奥さん、全部きれいに食べてくださいよ)
口紅が落ちかけて薄くなった色合いが何ともそそる。
 それにしても安田は情けない格好である。半身を起こすのにも人の手を借りる体たらくで、娘と女房を俺に犯されるなんて気の毒極まりない男だ。
 食べ終えて皿を片づける奈々枝を目で追いながら、俺は興味津々だった。自分が仕掛けた罠に獲物がかかる期待感は何ともいえない。それがセックスの相手となるのだから怖いほど気持ちは昂ぶってくる。
 やがてその時がきた。三十分が経過してそろそろ効き目が表れる頃と観察していると、奈々枝がちらちらと落ち着かない視線を見せ始めた。もちろん俺を覗う視線である。それまでの明るい笑顔は影を潜め、安田の冗談にも上の空の反応になってきた。
(もう薬はどっぷりだな…)
確信したところで俺は長居を詫びて辞することにした。
「休みの日にすまなかったな、磯貝くん」
「いえ、お大事に…」
安田の言葉を背にドアを閉め、わざとゆっくり歩いて行く。

 (来るか…来るか…)
通路を曲がり、エレベーターの前で待っていると、小走りに迫ってくる足音が聞こえてくる。
(来た…)
奈々枝であった。
「今日はすみません。玄関までご一緒します」
「いえ、もうここで」
奈々枝は答えない。笑顔もなく、引き締まった面持ちである。
 エレベーターに乗り込んでも無言で前を向いたままで、しかし横顔には決意めいた強張りがあって頬の辺りには微かな緊張が見られた。何かを言いだせず迷っている……。
 そのまま玄関まで並んで行き、
「それじゃ、僕はこれで」
「あの…」
「はい…」
「磯貝さん、今日、これから、ご予定は…」
言ってから周囲を見回した。おずおずと口を開いた奈々枝に、俺は予定はないと答えた。
「もし、ご迷惑でなければ、あとでお会いできないかしら…」
「はあ、何か?」
「いえ、ちょっとお話が…」
口籠った真剣な顔が可笑しくてたまらない。
「そうですか。実は僕も奥さんにお話があるんです」
驚いて顔を上げる奈々枝。話などあるはずがない。後押しをしてやったのである。
「何かしら?」
「それは、お会いした時に…」
「わかりました。…でも、なんでしょう。…あの、主人には…」
また周りに目を配った。
「わかっています。大丈夫です。信じてください」
奈々枝はほっとした顔でうっすら笑みを浮べると恥ずかしそうに品をつくった。
「沙織ちゃんはいいんですか?」
「あの子はこれから友達と会うって。父親が留守だからきっと遅くなるでしょう」
「心配じゃないですか?」
「別に。もう子供じゃないですから」
娘のことなどどうでもいい口ぶりで言う。俺は時間と場所を告げて奈々枝と別れた。



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