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『詠子の恋』
【スポーツ 官能小説】

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『詠子の恋』-28

「ちゃんと、最後まで……ね……最後まで、して……」
「よみ……」
 先端の挿入によって、わずかに破られた“操”は、ずきずきと痛みを発しているはずだ。“炸裂痛”とも呼ばれる、身体の一部をまさに“引き裂く”その痛撃を浴びながら、それでも詠子は、好きな相手との結合が、全うされることを望み希っていた。
「きて、こうクン……もっと、わたしの中まで、きて……」
「……わかった」
 吉川が意を決したように、己を奮い立たせて、腰に力を込めてきた。
「ん、ぐっ……!」
 再び体を襲う、重みのある痛み。それが、守り続けてきた“乙女の操”の最後の抵抗なのだとしたら、それは自らの手で、葬り去らなければならない。それがきっと、“女になる”ということなのだ。
「よみ……よみ……」
 吉川が、名前に労わりの気持ちを乗せて、呼びかけてくる。“大丈夫?”とか、“痛くない?”とか言わないのは、それを覚悟している詠子にとって、無用の言葉だとわかっているからだろう。

 ぐ……ぐ……

「く、う……つ……ん……!」
 本当に、何かが“破れる”ような感触が股の間で響き渡る。固く結んだ詠子の瞳から、痛みによって反応した涙が幾重にも伝い落ちた。
「あ、ぐ……つ……あ……う……!」

 ぐ……ぐ……ぷつっ…

「!」
 意識が飛びそうなほどの、今宵一番の痛撃が走った。

 ずぬるっ…!

「はぅぁっ……!?」
 刹那、身体の一番奥まで、熱く固いものが入り込んできた。
「あ、あ……あ……?」
 味わったことのない、なんと言っていいのわからない感触である。自慰の時、指を少し入れることもあったが、それとは比べ物にならないところまで、吉川の熱い象徴が突き立っているのだ。
「は、いった、の……?」
 そう訊くのが、やっとだった。
「うん……僕の全部、よみの中に入ってるよ……」
「そ、そう、なんだ……あは……入ったんだ……あはは……」
 気持ちがいい、とはお世辞にもいえないが、それとは違う充足感があって、頬を濡らしながら詠子は、笑みをその顔に浮かべていた。
「よみ……」
 心配げな吉川の頬に、詠子は手を伸ばして、そして、優しく触れた。
「だいじょうぶ……すごく、痛いけど……なんだか、とっても、うれしいの……」
「………」
「繋がってるところは……ズキズキ、するけど……入ってるとこは……ドキドキ、してる……」
 まるで、心臓がそこに移ったかのように、熱く激しい鼓動を感じる。
「つながってるの、わかるよ……キミと……こうクンと、ひとつになってるの……からだの奥で、すごくわかるよ……」
 詠子は、笑みながら、ぽろぽろと涙を零した。それは、痛みの反応だけではない、心の充足が催す、歓喜の涙だった。


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