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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第14話-21

「……なぎ君、草薙君」
「!」
 だから、声をかけられたことに気がつくまで、少し間ができてしまった。
「あ、す、すみません」
 その声をかけてきた相手が、東日本軟式野球協議会の会長である藤田篤司氏だったので、大和はすぐに帽子を取って、姿勢を正していた。
「今日は、素晴らしいパフォーマンスを見せてもらいましたよ」
「あ、ありがとうございます!」
 藤田氏が、プロで活躍した伝説の名投手かつ名監督であることを、当然ながら大和は知っている。マウンドでは感じなかった緊張に、身体を固くするのも無理はなかった。
「草薙君に、紹介したい人がいましてね」
「僕に、ですか?」
 藤田氏の横に立っていたのは、ハンチング帽を被ったあのサングラスの男だった。彼は、帽子とサングラスを外すと、とても透き通った瞳を、真っ直ぐ大和に向けたまま、その口を開いた。
「壬生 篤だ。君のピッチングは、よく見させてもらっている」
「………」
 天狼院隼人から、“あれな、プロのスカウトマンだ”と聞かされていた人物が、目の前にいる。大和は、藤田氏と正対したときとは、全く違う緊張に、身体を強張らせていた。
「城北リトルのチビッ子ライト、そして、“甲子園の恋人”」
「!」
「あの時の肘の故障から、よくここまで立ち直ってきたな」
 壬生の口元に、笑みが浮かんでいた。
「あ、あなたは…」
 “甲子園の恋人”という、全国的な異名はまだしも、城北リトルに所属していた頃には、投手ではなく外野手だったことまで知っているということは、相当に自分を追いかけていたことにもなろう。
「察しの通り、俺は元・プロのスカウトだった人間だ。もっとも、今じゃ現役から身を引いて、単なるロートルになってはいるがな」
 元、という言葉に、大和は違和感を持った。その手にしている手帳に、所狭しと貼り付けられた付箋を見れば、壬生がまだ“現役”のスカウトマンだと思えて仕方がない。
「いい選手を見るとな、どうしても追いかけたくなっちまうんだよ」
 “職業病の後遺症ってやつだな”と、壬生が低い声で笑う。
「そういうわけで、藤田会長さんを通して、声をかけさせてもらった。お前さんに、聞きたいことがあったんでな」
「聞きたい、こと……?」
 大和は、それが想像できていながら、壬生に問い返していた。
「お前さん、プロは考えているか?」
「!?」
 “いつか大和にも、声をかけてくるだろう”…。隼人の言葉が頭の中に蘇って、何度も繰り返される。
「僕、は……」
 “もし、その時が来たら、どう答える?”…。胸の片隅に残り続けたその言葉に対する答えを、大和は、少しの間を挟みはしたが、迷うことなく口にしていた。



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