『SWING UP!!』第14話-20
“隼リーグ選抜”対“猛虎リーグ選抜” 東西交流試合
【 隼 】｜１００｜０１０｜０２０｜４｜
【猛 虎】｜０１０｜１００｜０００｜２｜
「ストライク！！！ バッターアウト！！！ ゲームセット！！！」
“猛虎リーグ選抜チーム”の世良田が、大和の“スパイラル・ストライク”を空振りした瞬間、球場はこの試合において一番のどよめきを生み出した。
大和は、７・８・９回のイニングを全て、三者三振に仕留めたのである。つまり、“猛虎リーグ選抜チーム”の並み居る猛者を相手に、“９者連続奪三振”という、記録的な結果を残したのだ。
「お前は、“柄夏（えなつ）”かっての！」
打者として決勝本塁打を放ったばかりか、“９者連続奪三振”という、投手としても最上の結果を出した大和の姿は、まさに、伝説の左腕投手“柄夏 豊”を髣髴とさせるものだった。左右の違いこそあれ、試合の結果を見れば、雄太としては、大和にそう言わずにいられなかった。
「この試合にＭＶＰ賞があったとしたら、間違いなく草薙君でしたね」
二塁手の田村が、終盤は守備機会がなかったことに少しばかり残念な様子を見せつつ、それでも、試合に勝ったことに安堵した表情を浮かべていた。リーグ戦では敗戦が続いていたから、“勝利の味”というものを久しく忘れていた気がする、そんな田村であった。
「後期の対戦が、今から楽しみではあるな」
三塁手の六文銭が、言う。その言葉には、天狼院隼人の引退によって、事実上“隼リーグ”の、“最強にして最高の投手”になった大和に対する、警戒の色も込められていた。
「すっげーなぁ、草薙先輩！ 俺も、来年は“９連続”狙いますよ！」
「その前に、コントロールをしっかりするんだな。お前の場合、“９連続押し出し”の方が、可能性が高い」
「そこまでひどくないっしょ！？」
周囲に爆笑を生んだ、相模と仲里の掛け合いを合図にして、マウンド上の円陣はひとまず解けた。
「………」
当事者の大和は、涼しげな顔つきをのままである。“決勝の本塁打”を放ったことより、“９者連続奪三振”の記録を打ち立てたことより、“神宮球場”のマウンドを心ゆくまで楽しんだ喜びのほうが、彼には大きかった。
（桜子も一緒にいたら、もっと楽しかったろうな）
仲里とのバッテリーも、新鮮味があって面白かった。しかし、やはり、“最高のパートナー”である桜子と組んだマウンドだったなら、とも思ってしまうのは、仕方のないところだろう。
（桜子…）
試合の終了と共に、歓談の輪がそこかしこに出来上がっている様子を遠目に眺めながら、大和は、この場にいない、自分にとって一番大事な存在に、思いを馳せていた。