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It's
【ラブコメ 官能小説】

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☆☆☆-2

翌日、指導者にプリントが無いことを伝えると指導者は別の紙でいいから書いてきて、と陽向に言った。
二度手間だ。
その日帰ってからは、明日の目標と共に最初に提出しなければならない紙の2枚を書き上げた。
途中でSNSを開くとお知らせが1件届いていた。
見てみると湊からの友達申請で笑ってしまった。
『五十嵐湊です。よろしく』
知ってるよ、と思いながら承認ボタンを押す。
そのまま湊のページに飛ぶ。
友達は500人を超えていた。
結構前からやっていたのだろうか。
日記やつぶやきもかなり更新している。
遡ってみると、3、4年前の記事もあった。
自分の知らない湊がたくさんいた。
アルバムには高校の卒業式の写真も載っていた。
隣に写っている背の高い男は、この間一緒に飲みに行った雅紀だ。
彼とも高校が一緒だとは知らなかった。
湊はこの頃から相変わらず短髪で、髪全体を後ろに掻き上げるようなスタイルも変わっていなかった。
他の写真には湊のバンドメンバーの亮太とジョージも写っていた。
陽向は実習の課題を忘れ、しばらく湊のアルバムや記事を見ていた。
1ヶ月に1回は日記を書いている。
だんだん過去のものになっていき、大学の入学式までやってきた。
「おめでとー!」
「大学でもよろしく!」
たくさんの人からコメントをもらっている。
ボーッと眺めていた時、陽向はひとつのコメントに息を飲んだ。
「また大学も一緒だね!よろしく☆」
優菜だった。
まさか、優菜と友達だったなんて…。
しかし湊は他の人に返事を返していたが、優菜だけには返していなかった。
何があったわけでもないと思うが、優菜が湊に絡んでいるのを見ると、何だか心中穏やかでない。
見るのをやめたかったが、やはり色々と気になってしまう。
陽向は優菜のページに飛んだ。
結構な頻度で日記やつぶやきを更新している。
清楚系代表とも言える彼女のことなので、フワフワした天然っぷりをかましているのかと思えば、そうでもないようだ。
最新のつぶやきには『疲れた。いいことなんてなに一つない。生きてて意味あるのかな』と半ば意味深なことが書かれていた。
どんどん遡っていっても、そんなような事ばかり書いている。
ネガティブにも程がある。
病んでいるのを見て、自分が病みそうになる。
今度はプロフィールに飛ぶ。
優菜は意外にも、V系のバンドの追っかけらしい。
ライブ参戦歴が大量に書かれており、最後にはブログのURLも載っていた。
ふと時計を見ると、もう0:45だった。
明日も実習だし…と思い、陽向は画面を閉じた。
残りの課題を仕上げ、布団に入り、目を閉じる。
優菜の数々のつぶやきを思い出す。
大丈夫だろうか。
今日も相当メンタルをやられたみたいだし…。
でも、今までやってこれたから、きっと大丈夫だろう。

翌日、優菜はいつもの笑顔に戻っていた。
死にそうな顔してなくてよかった…と思う。
その日の実習は、優菜は村田さんについて回ったので帰り道もそんなにぐったりした様子ではなかった。
そんな中、SNSの話になる。
優菜の病んだ記事なども気になるし、実習中だけでも何か助けにはなれないかと思い、陽向はさりげなく話題に触れようとした。
「昨日五十嵐から友達申請来てさ、笑っちゃったよねー。今更って思って」
「あはは。そーなんだ」
「あれって結構前からあるんだね。あたし最近始めたばっかりで全然よく分からなくてさー」
陽向が笑いながら言うと、優菜はまた愛想笑いのような笑みを浮かべていた。
「てか、優菜ちゃん五十嵐と高校一緒だったんだね!全然知らなかったよー」
「うん。クラスも一緒だったよ。五十嵐くん、高校の頃からモテモテだったよ」
「あは。そーなんだ。意地悪なのにね」
「そんなことないよ。あたし、意地悪されたことなんかないよ。いつも優しかったよ」
「あたしなんて意地悪しかされてないから!あははっ」
なんだか苦しい話だ。
てか最初に湊の話をし始めた自分はアホだ。
こんな事を聞くために話しているんじゃない!
優菜の話を聞きたいんだ。
陽向が口を開こうとした時、優菜が何か呟いた。
「…の」
「え?」
「あたし、五十嵐くんのことが好きだったの。でも、いつも彼女がいて、その女の子が羨ましかった」
「……」
陽向はこの時本気で後悔した。
こんな話、しなきゃよかった…。
地雷を踏んでしまった。
「ひなちゃんが羨ましいな。ねぇ、ケンカとかしないの?」
「へっ!?…あ、するにはするけど…」
「それで、別れようとか言われないの?」
一体何が言いたいんだこの女は。
「言われた事はないかな……。いつか言われちゃうかな?あはは…」
陽向の言葉に、優菜は優しく微笑むだけだった。
しかしその微笑みはどことなくぎこちなくて、何か考えていそうな、深い闇に包まれたような笑みだった。


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