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It's
【ラブコメ 官能小説】

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☆☆☆-3

その夜、課題を終えてSNSを開くと、昨日の画面のままだったのでそのまま優菜のページが開かれた。
陽向はつぶやきを見て目を疑った。
『私の彼をとるなんて許せない…。私だって彼を独り占めしたいのに。ずっと好きだったのに…』
え…?
ずっと好きだったって…まさか…。
最悪の考えが頭を過る。
こんなページ見なければ、こんな変な気分にならずに済んだのに…と思うが、色々と気になって仕方がない。
陽向は優菜のプロフィールに戻り、ブログのURLを押した。
真っ黒の画面に表示される白と赤の文字。
記事は毎日何件も更新されている。
カテゴリーは、ライブ、日常、料理など色々あったが、その中に一つ気になるものがあった。
『Lovers』
愛人???
彼氏の事だろうか。
開いてみると、パスワード入力の画面に移った。
その時点で諦めるべきだったが、湊のことが頭を過ぎり、陽向は自分を制御できなくなっていた。
優菜の誕生日を入力してみる。
ダメだ、開かない。
今度は優菜の電話番号の下4桁を入力する。
これも違う。
気付いたらパスワードを解読するのに必死になっていた。
彼女が好きなバンドメンバーの誕生日、名前、初めてライブに行った日、好きな食べ物……どれも違う。
あー…ダメだ。
分からない。
その時、陽向は閃いた。
まさかとは思うが…。
思いついたものを入力する。
どうか開かないでほしい。
祈る気持ちでボタンを押すと、『no title』という題名の記事が画面いっぱいに広がった。
最新の記事は今日の18:27。
嘘でしょ……。
入力したのは湊の誕生日。
この時確信した。
優菜はまだ、湊のことが好きだ。

『今日も実習疲れた。なんてったって、あいつと2人だからね。帰りに私の彼の話されたし。早く別れないかな。私の方がずっと好きだったのに、なんでとられなきゃいけないの。本当に意味が分からない。早く別れてよ』

心臓がバクバク言っている。
見たくないと思うが、やっぱり気になって他の記事も見てしまう。
どれもこれも同じような内容。
湊への異常な愛がひしひしと伝わってくる。
緊張しすぎて手汗をかいてしまっている。
読み進めていくと、7月10日の記事にたどり着いた。
この日は陽向が地域実習の発表会で倒れた日だ。

『今日は発表会だった。本当にだるかった。でも、あいつが倒れてウケた。そのまま死んじゃえばよかったのに』

最後の言葉に鳥肌が立った。
あの優菜がこんな事を書くとは思えなかった。
でも、これは紛れもなく優菜のブログ。
陽向は画面を閉じてベッドに潜り込むと、頭から布団を被った。
湊はこのブログを知っているのだろうか。
あのSNSのページにURLが載っているのだから、存在は知っているだろう。
でも、パスワードは知らないはずだ。
湊に言うべきか…。
いや、言えない。
ここは無視するしかない。
自由に書かせておけばいい。
そんなんで別れるわけないし!
陽向は見なかったことにして、明日の憂鬱な実習の事を考えながら眠った。

「陽向」
「ん?なに?」
金曜日、実習の後駅近くのファミレスで夕食を摂っていると、湊が神妙な面持ちで陽向を見た。
「あのさ…」
湊は言いづらそうに陽向を見た。
「…別れよう」
「…え?」
なんで?
「あたし…何かした?」
湊は黙ったまま何も答えない。
「黙ってちゃわかんないよ!あたし湊に嫌なことした?!」
突然そんなことを言われても、頭の中がごちゃごちゃで整理できない。
湊は食べかけのハンバーグを残して伝票をひっ掴むと、レジで会計を済ませて1人で帰ってしまった。
陽向も慌てて後を追いかける。
ドアを開けて湊の姿を探す。
が、見当たらない。
電話をかけても呼び出し音が鳴るばかりで出ない。
なんで?
どうして?
意味わかんないよ…。
陽向はマンションの近くの公園にたどり着くと、ベンチに座って号泣した。
何も考えられず、ただただ泣いた。
頭が痛いけどそんなのどうでもよかった。
もう、湊に触れられないんだ。
抱きしめてもらえないんだ。
好きって言ってもらえないんだ…。
あたしの何がいけなかったのかな。
ワガママだから?
すぐ怒るから?
ねぼすけだから?
もう、わかんないよ…。
戻ってきてよ湊。
嘘だよって言って……。

けたたましい目覚ましの音で陽向は目覚めた。
枕が涙でビショビショだ。
…夢?
iPhoneの画面を見ると、木曜日だった。
今のは、夢だったようだ。
あまりにもリアルだったので、目覚めた今この瞬間も湊にフラれた気分でいっぱいだ。
大きなため息をつく。
優菜のブログなんて見たからあんな夢みたのかな…。
陽向は重い身体を起こして準備を済ませると、戦場に向かうような気持ちで家を出た。


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